鞏路感懐
鞏路感懷
鞏路感懐
鞏路感懐
- ウィキソース「鞏路感懷」参照。
- この詩は、作者が鞏(現在の河南省鄭州市鞏義市)に通じる街道を旅していたとき、心に感じたことを詠んだもの。
- 鞏路 … 鞏に通じる街道。鞏は、現在の河南省鄭州市鞏義市。ウィキペディア【鞏義市】参照。『読史方輿紀要』河南三、河南府に「鞏県は、府の東一百三十里。東のかた鄭州汜水県に至ること六十里、北のかた懐慶府温県に至ること二十五里。周の鞏伯の邑なり。戦国の時、之を東周と謂う。漢、県を置き、河南郡に属す。晋及び後魏之に因る。東魏は成皐郡に属す。北斉は洛州に属し、尋く廃す。隋の開皇十六年(596)、復た置く。大業の初め、県治を洛口に移し、仍ねて河南郡に属す」(鞏縣、府東一百三十里。東至鄭州汜水縣六十里、北至懷慶府温縣二十五里。周鞏伯邑。戰國時、謂之東周。漢置縣、屬河南郡。晉及後魏因之。東魏屬成皐郡。北齊屬洛州、尋廢。隋開皇十六年、復置。大業初、移縣治洛口、仍屬河南郡)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷四十八」参照。
- 感懐 … 心に抱いている思い。感慨。
- 呂温 … 772~811。中唐の詩人。字は和叔。またの字は化光。河中(山西省永済市)の人。貞元十四年(798)、進士に及第。王叔文・韋執誼と親交があったため、貞元末には左拾遺および侍御史となった。元和元年(806)、戸部員外郎となったが、宰相の李吉甫に憎まれ、地方に左遷されて死んだ。ウィキペディア【呂温】参照。
馬嘶白日暮
馬嘶いて白日暮れ
- 馬嘶 … わが馬が嘶く。古楽府「古詩、焦仲卿が妻の為の作」(『楽府詩集』巻七十三、『玉台新詠』巻一)に「其の日牛馬嘶き、新婦は青廬に入る」(其日牛馬嘶、新婦入靑廬)とある。青廬は、青い幔幕を張った幕舎。婚礼のとき、新婦が一時この中に入るという。北方の習俗。ウィキソース「古詩為焦仲卿妻作」参照。また、南朝陳の伏知道の楽府「従軍五更転五首」(『楽府詩集』巻三十三)の第四首に「依稀たり 北風の裡、胡笳 馬嘶雑う」(依稀北風裡、胡笳雜馬嘶)とある。依稀は、かすかでぼんやりしているさま。ウィキソース「從軍五更轉五首其四」参照。
- 白日暮 … 白く輝く日が暮れてゆく。白日は、輝く太陽。『楚辞』九章・思美人に「願わくは白日の未だ暮れざるに及ばんことを」(願及白日之未暮)とある。ウィキソース「楚辭/九章」参照。また、三国魏の曹植「白馬王彪に贈る」詩(『文選』巻二十四)の第四首に「原野何ぞ蕭条たる、白日は忽ち西に匿る」(原野何蕭條、白日忽西匿)とある。ウィキソース「贈白馬王彪」参照。
劒鳴秋氣來
剣鳴りて秋気来る
- 剣鳴 … 腰にさげた剣が鳴る。秋は、五行説では金に当たる。剣を作っている金属と秋の気とが共鳴しあい、剣も音を立てて鳴るという。『礼記』月令篇に「某日立秋、盛徳金に在り」(某日立秋、盛德在金)とある。盛徳は、天地が万物をそだてる偉大な恵みの力。ウィキソース「禮記/月令」参照。また、西晋の張協「雑詩十首」(『文選』巻二十九)の第七首の李善注に引く曹植「結客篇」に「利剣 手中に鳴り、一撃にして両尸僵る」(利劍鳴手中、一擊兩尸僵)とある。ウィキソース「昭明文選/卷29」参照。
- 秋気来 … 秋の気が訪れた。『楚辞』九弁に「悲しいかな、秋の気たるや。蕭瑟として、草木揺落して変衰す」(悲哉、秋之為氣也。蕭瑟兮、草木揺落而變衰)とある。蕭瑟は、秋風のさびしく吹くさま。揺落は、吹き散ること。変衰は、変化し衰えること。ウィキソース「九辯」参照。
我心渺無際
我が心 渺として際無し
- 我心 … わが思い。『詩経』召南・草蟲に「未だ君子を見ず、我が心傷悲す」(未見君子、我心傷悲)とある。君子は、ここでは夫。傷悲は、心が傷つくほどに悲しむこと。ウィキソース「詩經/草蟲」参照。
- 渺 … はるかに遠い様子。遠くかすかな様子。前漢の趙飛燕「帰風送燕の操」(『古詩紀』巻十二)に「君子を懐えども、渺として望み難し」(懷君子兮渺難望)とある。操は、琴の曲のこと。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷012」参照。『全唐詩』では「浩」に作り、「一作眇」と注する。『唐呂和叔文集』では「浩」に作る。
- 無際 … 「際まり無し」と読んでもよい。果てがない。際限がない。西晋の木華「海の賦」(『文選』巻十二)に「洪濤瀾汗として、万里際無し」(洪濤瀾汗、萬里無際)とある。洪濤は、大波。瀾汗は、大波のうねるさま。ウィキソース「海賦 (木華)」参照。
河上空徘徊
河上 空しく徘徊す
- 河上 … 黄河のほとり。『史記』陳丞相世家に「之を久しうして、項羽、地を略し、河上に至る」(久之、項羽略地至河上)とある。略は、攻略。ウィキソース「史記/卷056」参照。
- 徘徊 … さまよい歩き回る。行ったり来たりする。『荘子』盗跖篇に「而の意を独成して、道と与に徘徊せよ」(獨成而意、與道徘徊)とある。独成は、独り自ら成すこと。徘徊は、ここでは転変推移していくこと。ウィキソース「莊子/盜跖」参照。また、三国魏の曹植「七哀の詩」(『文選』巻二十三)に「明月高楼を照らし、流光正に徘徊す」(明月照高樓、流光正徘徊)とある。ウィキソース「七哀詩 (曹子建)」参照。また、三国魏の応瑒「五官中郎将の建章台の集いに侍するの詩」(『文選』巻二十)に「問う子何れの郷にか遊び、翼を戢めて正に徘徊すと」(問子遊何郷、戢翼正徘徊)とある。ウィキソース「侍五官中郎將建章臺集詩」参照。また、南朝梁の元帝の楽府「傷別離」(『玉台新詠』巻七、『楽府詩集』巻二十三では「関山月」に作る)に「月中桂樹を含み、流影自ずから徘徊す」(月中含桂樹、流影自徘徊)とある。ウィキソース「傷別離」「樂府詩集/023卷」参照。
詩型・韻字
- 五言絶句。
- 來・徊(上平声灰韻)。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻三百七十一(排印本、中華書局、1960年)
- 『唐呂和叔文集』巻二(『四部叢刊 初編集部』所収)
- 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 『唐詩品彙』巻四十三([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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