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和張僕射塞下曲(盧綸)

和張僕射塞下曲
張(ちょう)僕(ぼく)射(や)の塞(さい)下(か)の曲(きょく)に和(わ)す
盧(ろ)綸(りん)
  • ウィキソース「和張僕射塞下曲 (盧綸)」「和張僕射塞下曲 (錢起)」参照。
  • この詩は、左(さ)僕(ぼく)射(や)の張(ちょう)延(えん)賞(しょう)が作った「塞下の曲」に作者が唱和したもの。
  • 詩題 … 『全唐詩』巻二百七十八、および『元禄刊本』『唐詩品彙』では「和張僕射塞下曲六首其三」に作る。また『全唐詩』巻二百三十九に銭起の詩として重出し、題下に「一に盧綸の詩に作る」(一作盧綸詩)と注する。『唐五十家詩集本』では「和張僕射塞下曲六章其三」に作る。『楽府詩集』『万首唐人絶句』では「塞下曲六首其三」に作る。『唐詩別裁集』では「塞下曲二首其二」に作る。
  • 張僕射 … 左僕射の張延賞(726~787)のこと。貞元元年(785)八月、同中書門下平章事(宰相職)から尚書左僕射となり、同三年(787)正月、左僕射のまま同中書門下平章事に復帰、同七月に卒(しゅっ)した。ウィキペディア【張延賞】参照。
  • 僕射 … 官名。尚書僕射(尚書省の次官)。尚書省の長官は、尚書令と称したが、唐初に太宗(李世民)が皇帝になる前にこの地位に就いていたため、空席のままとなり、次官の左僕射・右僕射の二名が実質的長官となった。
  • 塞下曲 … 新楽府題の一つ。塞下は、辺境の塞(とりで)のあたりの意。『楽府詩集』巻九十二・新楽府辞・楽府雑題に収める楽曲の名。辺塞での戦闘や兵士の望郷の思いを詠う。古楽府の「出塞」「入塞」に似たもの。
  • 盧綸 … 743?~800。中唐の詩人。河中府蒲(ほ)県(けん)(山西省臨汾市蒲県)の人。字(あざな)は允言(いんげん)。大暦年間の初年、上京して科挙を受験したが何度も落第した。しかし、宰相の元載(げんさい)にその文才を認められて、閿(ぶん)郷(きょう)(河南省霊宝市)の尉となり、昇進して監察御史に至ったが、病気のため辞職して帰郷した。のち河中府を治めていた渾瑊(こんかん)に招かれて元帥判官、検校戸部郎中となった。大暦十才子の一人。『盧戸部詩集』十巻がある。ウィキペディア【盧綸】参照。
月黑雁飛高
月(つき)黒(くろ)くして雁(かり)の飛(と)ぶこと高(たか)く
  • 月黒 … 新月で月が欠けて見えないために暗いこと。また、月が雲に覆われて暗いとする解釈もある。匈奴は満月の頃に攻戦し、月が欠けると撤兵したという。『漢書』匈奴伝に「事(こと)を挙ぐるに、常に月の盛壮なるに随い、以て攻戦す。月虧(か)くれば則ち兵を退(しりぞ)く」(舉事、常隨月盛壯、以攻戰。月虧則退兵)とある。ウィキソース「漢書/卷094上」参照。また、晩唐の鄭谷「洛南の村舎に旅寓す」詩(『全唐詩』巻六百七十四)に「春陰 柳(りゅう)絮(じょ)を妨(さまた)げ、月黒くして梨花を見る」(春陰妨柳絮、月黑見梨花)とある。春陰は、春がすみ。柳絮は、柳の綿毛。ウィキソース「全唐詩/卷674」参照。
  • 黒 … 『唐詩解』には「一作落」と注する。こちらは「月落ちて」となる。
  • 雁飛高 … 雁が空高く飛んで行く。後漢の蔡琰(さいえん)(一説に蔡琰に仮託したもの)の楽府「胡笳十八拍」(『楽府詩集』巻五十九、『楚辞後語』巻三)の第五拍に「雁(かり)飛ぶこと高く、邈(はる)かにして尋ね難し、空しく腸(はらわた)を断ちて思い愔愔(あんあん)たり」(雁飛高兮邈難尋、空斷腸兮思愔愔)とある。ウィキソース「胡笳十八拍」「樂府詩集/059卷」「楚辭集注 (四庫全書本)/後語卷3」参照。
單于遠遁逃
単(ぜん)于(う) 遠(とお)く遁逃(とんとう)す
  • 単于 … 漢代にしばしば侵入してきた匈奴の王の称号。唐代は匈奴ではなく、吐(と)蕃(ばん)が侵入してきたが、ここでは時代を漢代として言っている。前漢の揚雄「長楊の賦」(『文選』巻九)の李善注に「単于は、匈奴王の号なり」(單于、匈奴王號)とある。ウィキソース「昭明文選/卷9」参照。また『史記集解』匈奴伝に引く『漢書音義』に「単于とは、広大の貌(さま)。其の天に象(かたど)りて単于然たるを言う」(單于者、廣大之貌。言其象天單于然)とある。ウィキソース「史記集解 (裴駰, 四庫全書本)/卷110」「史記三家註/卷110」参照。
  • 遠 … 『全唐詩』巻二百七十八、『全唐詩』巻二百三十九、および『唐五十家詩集本』『楽府詩集』『万首唐人絶句』では「夜」に作る。
  • 遁逃 … こっそりかくれて逃げる。遁走する。『漢書』陳湯伝に「若し禽獣を懐き、無道を臣に加うれば、則ち単于長く大罪を嬰(めぐ)らし、必ず遁逃(とんとう)し遠く舎(やど)りて、敢えて辺に近づかず」(若懷禽獸、加無道於臣、則單于長嬰大罪、必遁逃遠舍、不敢近邊)とある。ウィキソース「漢書/卷070」参照。
欲將輕騎逐
軽(けい)騎(き)を将(も)って逐(お)わんと欲(ほっ)すれば
  • 軽騎 … 機敏に動けるよう軽装した騎兵。軽騎兵。『史記』淮陰侯伝に「夜半に伝(でん)を発し、軽騎二千人を選び、人ごとに一(いち)赤(せき)幟(し)を持ち、間道の萆山(へいざん)よりして趙軍を望ましむ」(夜半傳發、選輕騎二千人、人持一赤幟、從閒道萆山而望趙軍)とある。萆山は、草木が蔽(おお)っている山。ウィキソース「史記/卷092」参照。
  • 欲~逐 … 後を追いかけようとしたら。
大雪滿弓刀
大雪(たいせつ) 弓(きゅう)刀(とう)に満(み)つ
  • 大雪 … 雪がたくさん降ること。大雪(おおゆき)。『春秋左氏伝』隠公九年に「凡そ雨三日より以(い)往(おう)を霖(りん)と為し、平地、尺(せき)を大雪と為す」(凡雨自三日以往爲霖、平地尺爲大雪)とある。尺は、一尺。ウィキソース「春秋左氏傳/隱公」参照。
  • 弓刀 … 弓や刀。弓剣。『新唐書』吐蕃伝上に「浮屠(ふと)の法を喜び、呪詛を習い、国の政事、必ず桑門(そうもん)を以て参決(さんけつ)せしむ。多く弓刀を佩(お)ぶ」(喜浮屠法、習咒詛、國之政事、必以桑門參決。多佩弓刀)とある。浮屠の法とは、仏教の教えのこと。桑門は、僧侶。参決は、ともに謀って決定すること。ウィキソース「新唐書/卷216上」参照。
  • 満 … 降り積もる。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 高・逃・刀(下平声豪韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百七十八(排印本、中華書局、1960年)※作者:盧綸、詩題:和張僕射塞下曲六首其三
  • 『全唐詩』巻二百三十九(排印本、中華書局、1960年)※作者:銭起
  • 『盧綸集』巻六(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)※詩題:和張僕射塞下曲六章其三
  • 『唐盧綸詩集』巻下(元禄二年刊本、『和刻本漢詩集成 唐詩8』所収、汲古書院、1975年、略称:元禄刊本)※詩題:和張僕射塞下曲六首其三
  • 『楽府詩集』巻九十三・新楽府辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)※詩題:塞下曲六首其三
  • 『万首唐人絶句』五言・巻十三(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)※詩題:塞下曲六首其三
  • 『唐詩解』巻二十三(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十二([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)※詩題:和張僕射塞下曲六首其三
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)※詩題:塞下曲二首其二
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