和張僕射塞下曲(盧綸)
和張僕射塞下曲
張僕射の塞下の曲に和す
張僕射の塞下の曲に和す
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻六、『全唐詩』巻二百七十八(盧綸)、『全唐詩』巻二百三十九(銭起)、『盧綸集』巻六(『唐五十家詩集』所収)、『唐盧綸詩集』巻下・元禄二年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩8』所収、233頁、略称:元禄刊本)、『楽府詩集』巻九十三、『唐詩品彙』巻四十二、『唐詩別裁集』巻十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐人万首絶句選』巻二、他
- 五言絶句。高・逃・刀(平声豪韻)。
- ウィキソース「和張僕射塞下曲 (盧綸)」「和張僕射塞下曲 (錢起)」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』巻二百七十八『元禄刊本』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』では「和張僕射塞下曲六首 其三」に作る。また、『全唐詩』巻二百三十九に銭起の詩として重出、題下に「一作盧綸詩」とある。『唐五十家詩集本』では「和張僕射塞下曲六章 其三」に作る。『楽府詩集』では「塞下曲六首 其三」に作る。『唐詩別裁集』では「塞下曲二首 其二」に作る。『唐人万首絶句選』では「塞下曲四首 其三」に作る。
- 張僕射 … 張延賞(727~787)のこと。貞元元年(785)八月、同中書門下平章事(宰相)から尚書左僕射となり、同三年(787)正月、左僕射のまま同中書門下平章事に復帰、同七月に卒した。ウィキペディア【張延賞】(中文)参照。
- 僕射 … 尚書省の長官。
- 塞下曲 … 新楽府題。塞下は、辺境の塞のあたりの意。『楽府詩集』巻九十二・新楽府辞・楽府雑題に収める楽曲の名。辺塞での戦闘や兵士の望郷の思いを詠う。古楽府の「出塞」「入塞」に似たもの。
- この詩は、僕射の張延賞が作った「塞下の曲」に作者が唱和したもの。
- 盧綸 … 739~799。中唐の詩人。河中蒲県(山西省永済県)の人。字は允言。大暦年間の初年、上京して科挙を受験したが何度も落第した。しかし、宰相の元載にその文才を認められて、閿郷(河南省霊宝市)の尉となり、昇進して監察御史に至ったが、病気のため辞職して帰郷した。のち河中府を治めていた渾瑊に招かれて元帥判官、検校戸部郎中となった。大暦十才子の一人。『盧戸部詩集』十巻がある。ウィキペディア【盧綸】参照。
月黑雁飛高
月黒くして雁の飛ぶこと高く
- 月黒 … 新月で月が欠けて見えないために暗いこと。また、月が雲に覆われて暗いとする解釈もあるが、ここでは採らない。匈奴は満月の頃に攻戦し、月が欠けると撤兵したという。『漢書』匈奴伝に「事を挙ぐるに、常に月の盛壮に随い、以て攻戦す。月虧くれば則ち兵を退く」(舉事、常隨月盛壯、以攻戰。月虧則退兵)とある。ウィキソース「漢書/卷094上」参照。
- 雁飛高 … 雁が空高く飛んで行く。後漢の蔡琰の「胡笳十八拍」(『楽府詩集』巻五十九、『楚辞後語』巻三)の第五拍に「雁飛ぶこと高く、邈かにして尋ね難し、空しく腸を断ちて思い愔愔たり」(雁飛高兮邈難尋、空斷腸兮思愔愔)とある。ウィキソース「胡笳十八拍」「樂府詩集/059卷」「楚辭集注 (四庫全書本)/後語卷3」参照。
- 雁 … 「鴈」に作るテキストもある。同義。
單于遠遁逃
単于 遠く遁逃す
- 単于 … 匈奴の王の称号。
- 遠 … 『全唐詩』巻二百七十八・巻二百三十九『唐五十家詩集本』『楽府詩集』『万首唐人絶句』では「夜」に作る。
- 遁逃 … こっそりかくれて逃げる。遁走する。『漢書』陳湯伝に「必ず遁逃し遠く舎りて、敢えて辺に近づかず」(必遁逃遠舍、不敢近邊)とある。ウィキソース「漢書/卷070」参照。
欲將輕騎逐
軽騎を将って逐わんと欲すれば
- 軽騎 … 機敏に動けるよう軽装した騎兵。『史記』淮陰侯伝に「夜半に伝を発し、軽騎二千人を選び、人ごとに一赤幟を持ち、間道の萆山よりして趙軍を望ましむ」(夜半傳發、選輕騎二千人、人持一赤幟、從閒道萆山而望趙軍)とある。「萆山」は、草木が蔽っている山。ウィキソース「史記/卷092」参照。
- 欲~逐 … 後を追いかけようとしたら。
大雪滿弓刀
大雪 弓刀に満つ
- 弓刀 … 弓や刀。
- 満 … 降り積もる。
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