>   漢詩   >   唐詩選   >   巻二 七古   >   呉宮怨(衛万)

呉宮怨(衛万)

呉宮怨
きゅうえん
衛万えいまん
  • 七言古詩。起・水・裏(上声紙韻)、春・塵・人(平声真韻)通押。
  • 『全唐詩』巻七百七十三所収。なお、この詩の末二句は、李白の「蘇台覧古」(七言絶句)の末二句と同じ。
  • 呉宮怨 … 唐代に作られた新楽府題。この詩は、おう夫差ふさの宮殿の跡を弔う哀歌。春秋時代、呉はえつといつも争っていた。呉王闔廬こうりょえつ勾践こうせんとの戦いに敗れて戦傷死した。夫差は父のあだを討つため、名臣しょの補佐を受けて会稽かいけいざんの戦いで勾践を降伏させたが、のちに勾践に滅ぼされた。ウィキペディア【夫差】参照。
  • 衛万 … 初唐の人と言われているが、伝記は不詳。今に伝わる詩は、この一首のみ。
君不見呉王宮閣臨江起
きみずや おうきゅうかく こうのぞんでおこるを
  • 君不見 … 見たまえ。
  • 宮閣 … 宮殿楼閣。
  • 臨江 … 川にのぞんで。
不捲珠簾見江水
珠簾しゅれんかずして江水こうすい
  • 珠簾 … 真珠で飾ったすだれ。実際には真珠でなくても、美しいすだれのことを言う。
  • 捲 … 『全唐詩』では「見」に作る。
  • 江水 … 川の水。
曉氣晴來雙闕間
ぎょうきたる 双闕そうけつかん
  • 暁気 … 夜明けの大気。
  • 双闕 … 宮門の上に建てられた一対の望楼。
潮聲夜落千門裏
ちょうせいよるつ 千門せんもんうち
  • 潮声 … 潮騒のひびき。
  • 千門 … 宮殿の多くの門。千は、数の多いことを示す。
勾踐城中非舊春
勾践こうせん城中じょうちゅう 旧春きゅうしゅんあら
  • 勾践 … 春秋時代のえつの王。呉王闔廬こうりょを戦傷死させたが、その子夫差ふさ会稽かいけいざんに戦って敗れた。復讐を誓い、のちに呉を滅ぼした。ウィキペディア【勾践】参照。
  • 旧春 … 昔ながらの春。元のままの春。
姑蘇臺下起黄塵
姑蘇こそだい 黄塵こうじんおこ
  • 姑蘇台 … 春秋時代の後期、呉王闔廬こうりょが姑蘇山(江蘇省蘇州市の西南)上に築き、後にその子夫差が改修した離宮。西施など大勢の美女を住まわせて遊んだという。台とは、建物を築くとき、土を高く盛ってつき固めた台基のこと。『元和郡県図志』江南道、蘇州の条に「(姑蘇)山は(蘇)州の西四十里に在り。其の上に闔廬こうりょ、台をきづく」(山在州西四十里。其上闔閭起臺)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷25」参照。また『山堂肆考』宮室、寵西施の条に「呉王夫差越を破り、越乃ち西施を進めて軍を退かんことを請う。呉王之を許し、呉王既に西施を得。甚だ之を寵し、為に姑蘇台を築く。高さ三百丈、其の上にて遊宴す」(吳王夫差破越、越乃進西施請退軍。吳王許之、吳王既得西施。甚寵之、爲築姑蘇臺。髙三百丈、遊宴其上)とある。ウィキソース「山堂肆考 (四庫全書本)/卷172」参照。
  • 下 … 『全唐詩』には「一作上」とある。
  • 黄塵 … 黄色の土ぼこり。
祗今唯有西江月
祗今ただいま 西江せいこうつきのみ
  • 祗今 … ただいま。「祗」は、意味を強調する言葉。
  • 唯 … 「ただ~のみ」と読み、「ただ~だけ」「ただ~にすぎない」と訳す。限定の意を示す。「惟」と同じ。
  • 西江 … 姑蘇台の西を流れる川。
曾照呉王宮裏人
かつらす おうきゅうひと
  • 呉王宮裏人 … 呉王の後宮にいた女性たち。特に美人の西せいを指す。ウィキペディア【西施】参照。
歴代詩選
古代 前漢
後漢
南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行