呉宮怨(衛万)
呉宮怨
呉宮怨
呉宮怨
君不見呉王宮閣臨江起
君見ずや 呉王の宮閣 江に臨んで起るを
- 君不見 … 見たまえ。
- 宮閣 … 宮殿楼閣。
- 臨江 … 川にのぞんで。
不捲珠簾見江水
珠簾を捲かずして江水を見る
- 珠簾 … 真珠で飾ったすだれ。実際には真珠でなくても、美しいすだれのことを言う。
- 捲 … 『全唐詩』では「見」に作る。
- 江水 … 川の水。
曉氣晴來雙闕間
暁気晴れ来る 双闕の間
- 暁気 … 夜明けの大気。
- 双闕 … 宮門の上に建てられた一対の望楼。
潮聲夜落千門裏
潮声夜落つ 千門の裏
- 潮声 … 潮騒のひびき。
- 千門 … 宮殿の多くの門。千は、数の多いことを示す。
勾踐城中非舊春
勾践の城中 旧春に非ず
- 勾践 … 春秋時代の越の王。呉王闔廬を戦傷死させたが、その子夫差と会稽山に戦って敗れた。復讐を誓い、のちに呉を滅ぼした。ウィキペディア【勾践】参照。
- 旧春 … 昔ながらの春。元のままの春。
姑蘇臺下起黄塵
姑蘇台下 黄塵起る
- 姑蘇台 … 春秋時代の後期、呉王闔廬が姑蘇山(江蘇省蘇州市の西南)上に築き、後にその子夫差が改修した離宮。西施など大勢の美女を住まわせて遊んだという。台とは、建物を築くとき、土を高く盛ってつき固めた台基のこと。『元和郡県図志』江南道、蘇州の条に「(姑蘇)山は(蘇)州の西四十里に在り。其の上に闔廬、台を起く」(山在州西四十里。其上闔閭起臺)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷25」参照。また『山堂肆考』宮室、寵西施の条に「呉王夫差越を破り、越乃ち西施を進めて軍を退かんことを請う。呉王之を許し、呉王既に西施を得。甚だ之を寵し、為に姑蘇台を築く。高さ三百丈、其の上にて遊宴す」(吳王夫差破越、越乃進西施請退軍。吳王許之、吳王既得西施。甚寵之、爲築姑蘇臺。髙三百丈、遊宴其上)とある。ウィキソース「山堂肆考 (四庫全書本)/卷172」参照。
- 下 … 『全唐詩』には「一作上」とある。
- 黄塵 … 黄色の土ぼこり。
祗今唯有西江月
祗今 唯だ西江の月のみ有り
- 祗今 … ただいま。「祗」は、意味を強調する言葉。
- 唯 … 「ただ~のみ」と読み、「ただ~だけ」「ただ~にすぎない」と訳す。限定の意を示す。「惟」と同じ。
- 西江 … 姑蘇台の西を流れる川。
曾照呉王宮裏人
曾て照らす 呉王宮裏の人
- 呉王宮裏人 … 呉王の後宮にいた女性たち。特に美人の西施を指す。ウィキペディア【西施】参照。
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