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送別二首 其二(魚玄機)

送別二首 其二
送別そうべつしゅ
ぎょげん
  • 〔テキスト〕 『全唐詩』巻八百四、『万首唐人絶句』巻四十(内閣文庫蔵)、『才調集』巻十、他
  • 七言絶句。歸・飛(平声微韻)。
  • ウィキソース「送別二首 其二 (魚玄機)」参照。
  • 送別二首 … 『全唐詩』ではそれぞれ独立して収録している。
  • 魚玄機 … 844~871。晩唐の女流詩人。あざなよう蕙蘭けいらん。長安(陝西省西安市)の人。高級官吏であったおくの側室になったが、その後捨てられ、道観どうかん(道教の寺院)に入ってじょどうとなった。おん庭筠ていいんをはじめ長安の名士たちと親交を結んだ。のちに侍女を殺したため処刑された。森鷗外に小説「魚玄機」がある。青空文庫「魚玄機」参照。
水柔逐器知難定
みずやわらかにしてうつわう さだがたきを
  • 水 … 自分自身に喩える。
  • 柔 … 『全唐詩』には「一作流」とある。
  • 器 … 別れた相手に喩える。
  • 逐 … 意に随うこと。
  • 水柔逐器 … 故事成語「水は方円の器に随う」を踏まえている。
  • 難定 … 自分で自分の運命を定めることができない。
雲出無心肯再歸
くもでてこころし えてふたたかえらんや
  • 雲 … 別れた相手に喩える。
  • 雲出無心 … 陶淵明「帰去来の辞」に「雲は無心にして以てしゅうを出で、鳥は飛ぶにみて還るを知る」(雲無心以出岫、鳥倦飛而知還)とあるのに基づく。岫は、山の岩穴。転じて、深い山あい。峰。
惆悵春風楚江暮
惆悵ちゅうちょうす しゅんぷうこうくれ
  • 惆悵 … 嘆き悲しむこと。傷み悲しむこと。後漢の秦嘉「婦に贈る詩三首 其二」(『玉台新詠』巻一)に「路に臨みて惆悵を懐き、あたりて正にてきちょくす」(臨路懷惆悵、中駕正躑躅)とある。躑躅は、行っては止まり、行っては止まって進まないこと。ウィキソース「贈婦詩」参照。
  • 楚江 … 長江の湖南・湖北省一帯の川を指す。楚は、春秋戦国時代、楚の国が長江中流の地を領有していたことから。
  • 暮 … 夕方。日暮れ。
鴛鴦一隻失群飛
鴛鴦えんおう一隻いっせき れをうしなって
  • 鴛鴦 … おしどり。鴛は、おしどりの雄。鴦は、雌。夫婦仲の睦まじいことに喩える。
  • 一隻 … 一羽。
  • 失群飛 … 群れからはぐれて飛んでいること。自分自身の境遇に喩える。
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