送別二首 其一(魚玄機)
送別二首 其一
送別二首 其の一
送別二首 其の一
- 〔テキスト〕 『全唐詩』巻八百四、『万首唐人絶句』巻四十(内閣文庫蔵)、『才調集』巻十、他
- 七言絶句。期・離(平声支韻)、飛(平声微韻)通用。
- ウィキソース「送別二首 其一 (魚玄機)」参照。
- 送別二首 … 『全唐詩』ではそれぞれ独立して収録している。
- 魚玄機 … 844~871。晩唐の女流詩人。字は幼微・蕙蘭。長安(陝西省西安市)の人。高級官吏であった李億の側室になったが、その後捨てられ、道観(道教の寺院)に入って女道士となった。温庭筠をはじめ長安の名士たちと親交を結んだ。のちに侍女を殺したため処刑された。森鷗外に小説「魚玄機」がある。青空文庫「魚玄機」参照。
秦樓幾夜愜心期
秦楼 幾夜か 愜心を期せしも
- 秦楼 … 秦国の楼台。秦の穆公(在位前659~前621)の娘弄玉と、その婿で簫の名人蕭史との『列仙伝』に見える故事を踏まえる。蕭史は弄玉を娶り、彼女に簫の吹き方を教え、彼女は鳳凰の鳴き声が吹けるようになった。数年後、鳳凰が簫の音に誘われて訪れるようになった。穆公は彼らのために鳳台を築いてやった。のちに二人は昇天して仙人になったという。秦楼は、この鳳台のこと。『列仙伝』巻上に「蕭史は、秦の穆公の時の人なり。善く簫を吹き、能く孔雀・白鶴を庭に致す。穆公に女有り、字は弄玉、之を好む。公遂に女を以て妻す。日〻弄玉に鳳鳴を作すを教う。居ること数年、吹くこと鳳声に似たり。鳳凰来りて其の屋に止まる。公為に鳳台を作るに、夫婦其の上に止まり、下らざること数年、一日、皆鳳凰に随って飛び去る。故に秦人為に鳳女祠を雍宮中に作るに、時に簫声有るのみ」(蕭史者、秦穆公時人也。善吹簫、能致孔雀白鶴於庭。穆公有女、字弄玉、好之。公遂以女妻焉。日教弄玉作鳳鳴。居數年、吹似鳳聲。鳳凰來止其屋。公爲作鳳臺、夫婦止其上、不下數年、一日、皆隨鳳凰飛去。故秦人爲作鳳女祠於雍宮中、時有簫聲而已)とある。ウィキソース「列仙傳」参照。
- 愜心 … 満足すること。満足した気持ち。愜は、飽き足りる。
- 期 … 期待する。
不料仙郎有別離
料らざりき 仙郎 別離有らんとは
- 不料 … 思いもかけず。
- 仙郎 … 仙人。ここでは蕭史が昇天して仙人になった故事にかけて、李億を指す。
- 有別離 … 別れがあるなんて。李億に捨てられた悲しさを表している。
睡覺莫言雲去處
睡覚 言う莫かれ 雲の去りし処
- 睡覚 … 眠りからさめる。
- 莫言 … 尋ねてはいけない。『全唐詩』には「一作不嫌」とある。
- 雲 … 雲雨。男女の契りを指す。楚の宋玉の「高唐賦」にある「巫山之夢」の故事を踏まえる。楚の懐王が夢の中で巫山の神女と契りを結び、神女が立ち去るとき、「自分は巫山の峰に住み、朝は雲に、夕は雨になります」と告げて姿を消した。翌朝巫山の方を見ると雨雲が渦巻いていたという。
殘燈一醆野蛾飛
残灯 一醆 野蛾飛べり
- 残灯 … 燃えつきようとする灯。
- 醆 … 小皿。「盞」と同じ。ここでは灯油と灯心を入れる小皿。
- 野蛾 … 野辺の蛾。
こちらもオススメ!
歴代詩選 | |
古代 | 前漢 |
後漢 | 魏 |
晋 | 南北朝 |
初唐 | 盛唐 |
中唐 | 晩唐 |
北宋 | 南宋 |
金 | 元 |
明 | 清 |
唐詩選 | |
巻一 五言古詩 | 巻二 七言古詩 |
巻三 五言律詩 | 巻四 五言排律 |
巻五 七言律詩 | 巻六 五言絶句 |
巻七 七言絶句 |
詩人別 | ||
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | は行 | ま行 |
や行 | ら行 |