山園小梅二首 其一(林逋)
山園小梅二首 其一
山園の小梅 二首 其の一
山園の小梅 二首 其の一
衆芳搖落獨暄妍
衆芳 揺落して 独り暄妍
- 衆芳 … たくさんの香りのよい花。
- 揺落 … 散り落ちる。
- 独 … ただ一つ。ただ梅の花だけが。
- 暄妍 … 日差しが暖かで美しい。「暄」は暖かい。「妍」は美しい。ここでは梅の花が艶やかで美しく咲いていること。
占盡風情向小園
風情を占め尽くして 小園に向う
- 風情 … 物事の趣。情趣。風情。
- 占尽 … 独占する。独り占めにする。
- 小園 … 小さな庭。
- 向 … 「むかう」と読むが、「於」「在」と同じ。「(その場所)で」「(その場所)において」の意。
疎影橫斜水清淺
疎影 横斜して 水 清浅
- 疎影 … (水面に映った)梅の枝のまばらな影。
- 横斜 … 横に、斜めに影を落とす。
- 清浅 … 清く浅い小川のほとり。
暗香浮動月黃昏
暗香 浮動して 月 黄昏
- 暗香 … どこからともなく漂ってくる花の香り。「暗」は、目に見えないの意。
- 浮動 … ふわふわと漂い動くこと。
- 月黄昏 … 月の光がおぼろげで、ほの暗い様子。「黄昏」は通常「夕暮れ時」の意であるが、ここでは月を形容する言葉として解釈した。
霜禽欲下先偸眼
霜禽 下らんと欲して 先ず眼を偸み
- 霜禽 … 霜を帯びた鳥。または白い鳥。
- 欲下 … 梅の枝に舞い降りようとして。
- 偸眼 … 盗み見る。人に気づかれないように、こっそりと見る。
粉蝶如知合斷魂
粉蝶 如し知らば 合に魂を断つべし
- 粉蝶 … 白い蝶。「粉」は、おしろい。
- 如知 … もし(この花を)知ったならば。
- 合 … 「まさに~べし」と読み、「~のはずである」「~に違いない」と訳す。推量の意を示す。再読文字。「当」「応」などと同じ。
- 断魂 … 魂が消えてしまうような思い。たいへん驚くこと。
幸有微吟可相狎
幸いに微吟の相狎るべき有り
- 幸 … 幸いなことに。
- 微吟 … 小声で詩を口ずさむこと。
- 相狎 … (私の声と梅の花とが)打ち解け合う。親しむ。似合う。
不須檀板共金尊
須いず 檀板と金尊とを
- 不須 … 必要がない。無用だ。
- 檀板 … 檀の木で作った拍子木。
- 金尊 … 酒樽の美称。金樽。
- 共金尊 … 「金尊と」と読む。「与」と同じ。
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