再過露筋祠(王士禎)
再過露筋祠
再び露筋祠に過る
再び露筋祠に過る
- 〔テキスト〕 『漁洋山人精華録』巻五(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
- 七言絶句。然・煙・蓮(平声先韻)。
- 露筋祠 … 江蘇省揚州市高郵市にある祠廟。邵伯湖の東北岸にある。唐の頃、ある娘が嫂と旅をしてこの地まで来たとき、蚊が群れ飛んでいた。そこに農夫の小屋があり、嫂はそこに寄宿した。娘は貞操を守って野宿し、蚊に食われて死に、その皮が裂けて筋まで露出したという。祠はその娘を祀ったもの。起句からそこには娘の像があったらしい。
- 再過 … 再び通り過ぎる。「再過」と題するのは、以前に「露筋祠」と題する五言律詩があるから。
- この詩は順治十七年(1660)、作者二十七歳の作。
- 王士禎 … 1634~1711。清の詩人。山東省新城の人。字は貽上。号は漁洋山人・阮亭。本名は士禛であるが、彼の死後、清の雍正帝の諱、胤禛を避けて士正と改められ、のち乾隆帝から士禎の名を賜った。順治十五年(1658)、進士に及第。官は刑部尚書に至る。朱彝尊と並称して朱王といわれる。「神韻説」を提唱し、その詩説を元に『唐賢三昧集』を編纂した。詩文集『帯経堂集』九十二巻、『漁洋山人精華録』十二巻などがある。ウィキペディア【王士禎】参照。
翠羽明璫尚儼然
翠羽 明璫 尚お儼然たり
- 翠羽 … 翡翠(かわせみ)の羽で作った髪飾り。
- 明璫 … 明珠で作った耳飾り。
- 儼然 … 厳かな様子。気高い様子。
湖雲祠樹碧於煙
湖雲 祠樹 煙よりも碧なり
- 湖雲 … 湖上に垂れ込めた雲。
- 祠樹 … 祠を囲む木々。
- 碧於煙 … 朝靄よりも深い青緑色をしている。
行人繫纜月初墮
行人 纜を繫いで 月初めて堕ち
- 行人 … 旅人。作者自身を指す。
- 繫纜 … 纜をつないで舟をとめる。「纜」は舟を岸につなぐ綱。
- 月初堕 … たった今、月が沈んで夜が明けた。
- 初 … 「はじめて」と読み、「やっと~したばかり」「たったいま~したばかり」「いましがた~したばかり」と訳す。
門外野風開白蓮
門外の野風 白蓮開く
- 門外 … 祠門の外。
- 野風 … 野を吹く風。
- 開白蓮 … 辺り一面の白蓮の花が次々とぱっと開いていく。「白蓮」は娘の貞操に喩えたもの。
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