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漁翁(柳宗元)

漁翁
漁翁ぎょおう
りゅう宗元そうげん
  • 〔テキスト〕 『唐詩三百首』七言古詩、『全唐詩』巻353、他
  • 七言古詩。宿・竹(入声屋韻)、綠(入声沃韻)、逐(入声屋韻)通押。
  • ウィキソース「漁翁」参照。
  • 漁翁 … 漁師の老人。老漁夫。
  • 柳宗元 … 773~819。中唐の文人・政治家。河東(山西省永済県)の人。あざなこう。貞元九年(793)、劉禹錫とともに進士に及第。校書郎、藍田県(陝西省)尉、監察御史裏行を歴任。政治改革に乗り出したが失脚。辺地に左遷され、柳州(広西チワン族自治区柳州市)で死去した。唐宋八大家のひとり。韓愈とともに古文復興につとめた。詩においては王維・孟浩然・韋応物らと同様、自然をうたった詩が優れている。ウィキペディア【柳宗元】参照。
漁翁夜傍西巖宿
漁翁ぎょおう よる 西巌せいがんうて宿しゅく
  • 西巌 … 西岸の大きな岩。
  • 傍 … 沿って。
  • 宿 … 停泊する。夜を過ごす。
曉汲清湘燃楚竹
あかつきせいしょうんで ちく
  • 暁 … 夜明け。明け方。
  • 汲清湘 … 清らかな湘江の水を汲む。湘江は広西チワン族自治区に発して湖南省を北上し、しょうすいと合流して洞庭湖に注ぐ川。ウィキペディア【湘江】参照。
  • 楚竹 … 篠竹の類。「楚」は今の湖北省から湖南省一帯の古名。この地方は篠竹を多く産出するのでこう呼ぶ。
  • 燃 … 燃やす。『唐詩三百首』では「然」に作る。同義。
煙銷日出不見人
けむりえ でて ひと
  • 煙 … 朝もや。川霧。炊事の煙ではない。
  • 銷 … ここでは晴れる。「消」と同じ。
  • 人 … 漁翁を指す。
欸乃一聲山水綠
欸乃あいだい一声いっせい 山水さんすいみどりなり
  • 欸乃 … 「えいおう」といった、舟をこぐときのかけ声。また、櫓のきしむ音という説もある。
  • 山水緑 … 山も水も緑一色に染まる。
迴看天際下中流
天際てんさい迴看かいかんして 中流ちゅうりゅうくだれば
  • 天際 … 空の果て。
  • 迴看 … 振り返って眺める。
  • 中流 … 川の中ほど。川幅の中央付近。川の上流・下流に対する中流の意ではない。
巖上無心雲相逐
がんじょう しんくもあい
  • 巌上 … 昨夜舟を泊めた岩の上。
  • 無心雲相逐 … 雲が無心に追いかけっこしているように流れて行く。陶淵明「帰去来の辞」に「雲は無心にして以てしゅうを出で、鳥は飛ぶにみて還るを知る」(雲無心以出岫、鳥倦飛而知還)とあるのに基づく。「岫」は山の岩穴。転じて、深い山あい。峰。
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