衛霊公第十五 37 子曰事君敬其事而後其食章


416(15-37)
子曰、事君、敬其事、而後其食。
子曰、事君、敬其事、而後其食。
子曰く、君に事うるには、其の事を敬して、其の食を後にす。
現代語訳
- 先生 ――「おかみにつかえるには、職務に気をくばり、給料のことはあとだ。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 孔子様がおっしゃるよう、「国家の官吏としては、職責を重んじ所管事務に精励することがまず第一で、食禄俸給などを問題にすべきでない。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 先師がいわれた。――
「君に仕えるには、恭敬の念をもって職務に精励し、食禄は第二とすべきである」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 事 … 仕える。
- 敬 … 「敬みて」とも読む。大切にする。(仕事に)精励する。
- 食 … 俸禄。待遇。俸給。
- 後 … 後回しにする。度外視する。
補説
- 『注疏』に「此の章は臣と為りて君に事うるの法を言うなり」(此章言爲臣事君之法也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 事君、敬其事、而後其食 … 『集解』に引く孔安国の注に「先ず力を尽くし、然る後に禄を食むなり」(先盡力、然後食祿也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「国家の事は為さざること無きを知る。是れ其の事を敬するなり。必ず勲績に纏うこと有りて、乃ち禄賞を受く。是れ其の食を後にするなり。江熙云う、格しく官次に居り、以て其の道に達す、君に事うるの意なり。蓋し時に利禄以て之を君に事うることを傷むならん、と」(國家之事知無不爲。是敬其事也。必有纒勲績、乃受祿賞。是後其食也。江熙云、格居官次、以達其道、事君之意也。蓋傷時利禄以事君之也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「言うこころは当に先ず力を尽くして其の職事を敬み、必ず勲績有りて後に禄を食むべきなり」(言當先盡力敬其職事、必有勳績而後食祿也)とある。また『集注』に「後は、獲るを後にすの後と同じ。食は、禄なり。君子の仕うるや、官守有る者は其の職を修め、言責有る者は其の忠を尽くす。皆以て吾の事を敬するのみ。先に禄を求むるの心有る可からざるなり」(後、與後獲之後同。食、祿也。君子之仕也、有官守者修其職、有言責者盡其忠。皆以敬吾之事而已。不可先有求祿之心也)とある。後獲は、「雍也第六20」に見える。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「劉氏摯曰く、君子小人の分かるるは、義利に在るのみ。小人の才も用いるに足らざるに非ず、特に心の向かう所、義に在らず。賞を希うの志、毎に事の先に在りて、事を奉ずるの心、毎に賞の後に在り、と」(劉氏摯曰、君子小人之分、在義利而已。小人才非不足用、特心之所向、不在乎義。希賞之志、毎在事先、奉事之心、毎在賞後)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「王制に曰く、論定まりて然る後之を官にす。官に任じて然る後之を爵す。位定まりて然る後之を禄す、と。是れ其の食を後にすとは、古えの礼なり」(王制曰、論定然後官之。任官然後爵之。位定然後祿之。是後其食者古之禮也)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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