衛霊公第十五 36 子曰君子貞而不諒章
415(15-36)
子曰、君子貞而不諒。
子曰、君子貞而不諒。
子曰く、君子は貞にして諒ならず。
現代語訳
- 先生 ――「できた人は堅いが、ガンコではない。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 孔子様がおっしゃるよう、「君子は、道理の正しいところは固く守って動かぬが、理非曲直を択ばずに初一念に執着するようなことはない。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 先師がいわれた。――
「君子は正しいことに心変りがしない。是も非もなく心変りがしないのではない」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 君子 … 徳の高い立派な人。人格者。反対は小人。
- 貞 … 正しい。変わらない正しさ。
- 諒 … 小さな信義。頑なな義理立て。
補説
- 『注疏』に「此の章は正道を貴びて小信を軽んずるなり」(此章貴正道而輕小信也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 君子貞而不諒 … 『集解』に引く孔安国の注に「貞は、正なり。諒は、信なり。君子の人は、其の道を正しくするのみにして、言は必ずしも小信ならざるなり」(貞、正也。諒、信也。君子之人、正其道耳、言不必小信也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「貞は、正なり。諒は、信なり。君子は権変常無きも、事を為すに苟くも道に合し、理の正を得るが若し。君子之を為すや、必ずしも小信を存して、自ら溝瀆に経らざるなり。一に通じて云う、君子の道は正しからざるは無し。人をして之を信ぜしむること能わざるなり、と」(貞、正也。諒、信也。君子權變無常、若爲事苟合道、得理之正。君子爲之、不必存於小信、自經於溝瀆也。一通云、君子道無不正。不能使人信之也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「貞は、正なり。諒は、信なり。君子の人は、其の道を正しくするのみ。言は必ずしも小信ならざるなり」(貞、正也。諒、信也。君子之人、正其道耳。言不必小信)とある。また『集注』に「貞は、正しくして固なり。諒は、則ち是非を択ばずして信を必とす」(貞、正而固也。諒、則不擇是非而必於信)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「馮氏椅曰く、万変を歴て、其の正を失わざる者は、貞なり。諒は則ち固く守りて、変を知らざる者なり。故に曰く、貞とは事の幹なり、と。豈に匹夫匹婦の諒を為すが若くならんや、と」(馮氏椅曰、歴萬變、而不失其正者、貞也。諒則固守、而不知變者也。故曰、貞者事之幹也。豈若匹夫匹婦之爲諒也哉)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「貞にして諒をせず、孔安国曰く、貞は正、諒は信なり、と。朱註に、貞は正にして固なり、と。皆非なり。蓋し貞とは内に存する者の変ぜざるを謂うなり。貞女の貞の如き、以て見る可きのみ。諒とは、信ぜらるることを人に求むるを謂うなり」(貞而不諒、孔安國曰、貞正、諒信也。朱註、貞正而固也。皆非矣。蓋貞者謂存於内者之不變也。如貞女之貞、可以見已。諒者、謂求信於人也)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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