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憲問第十四 44 子曰上好禮章

376(14-44)
子曰、上好禮、則民易使也。
いわく、かみれいこのめば、すなわたみ使つかやすし。
現代語訳
  • 先生 ――「上の人に規律があれば、人民も使いやすくなる。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「上に立つせいしゃが礼を好んで民にのぞめば、人民もその風に化せられて礼を好むに至り、上下の分が定まって、とうしやすくなるものぞ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「為政者が礼を好むと、人民はこころよく義務をつくすようになる」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 上 … 上に立つ者。為政者。
  • 礼 … 上下の区別など、伝統的な制度や社会生活上の慣習。
  • 民 … 人民。
  • 易使 … 使いやすくなる。統治しやすくなる。
補説
  • 『注疏』に「此の章は君上礼を好めば、則ち民は敢えて敬せざるは莫く、故に使い易きを言うなり」(此章言君上好禮、則民莫敢不敬、故易使也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 上好礼、則民易使也 … 『集解』の何晏の注に「民敢えて敬せざるは莫し。故に之を使い易きなり」(民莫敢不敬。故易使之也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「礼は敬を以て主と為す。君既に礼を好めば、則ち民敢えて敬せざるは莫し。故に使い易きなり。民敢えて敬せざるは莫し。故に之を使い易きなり」(禮以敬爲主。君既好禮、則民莫敢不敬。故易使也。民莫敢不敬。故易使之也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『集注』に引く謝良佐の注に「礼達して分定まる。故に民使い易し」(禮達而分定。故民易使)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「論に曰く、夫子の人を教うるは、曰く徳、曰く学、曰く礼、曰く義と、必ず好むを以て上と為す。……蓋し好めば則ち熟し、熟すれば則ち験し、験すれば則ち其の応ずること窮まり無し。漢唐以来、らいを置き、礼官を設けて、以て儀文度数の詳らかなるを講ぜずということ莫し。然れども徒らに虚器と為り、天下に達せざる者は、豈にわずかに文具に供して、之を好むの心未だ至らざるが故に非ずや」(論曰、夫子之教人、曰德、曰學、曰禮、曰義、必以好爲上。……蓋好則熟、熟則驗、驗則其應無窮矣。漢唐以來、莫不置禮闈、設禮官、以講儀文度數之詳。然而徒爲虚器、不達於天下者、豈非纔供文具、而好之之心未至故乎)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「孔子つねに古えを好む、学を好む、徳を好む、仁を好む、礼を好む、義を好むと曰いて、知を好むの教え無し。故に知る仁義礼智は、孔子の時の無き所なることを。蓋し礼・義なる者は道なり。道なる者は古えの道なり。学とは之を学ぶなり。徳なる者は有徳の人なり。仁なる者は仁徳なり。其の好む所をて、孔子の心知る可し」(孔子毎曰好古好學好徳好仁好禮好義、而無好知之教。故知仁義禮智、孔子時所無也。蓋禮義者道也。道者古之道也。學者學之也。徳者有徳之人也。仁者は仁徳也。觀其所好、而孔子之心可知矣)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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