子路第十三 16 葉公問政章
318(13-16)
葉公問政。子曰、近者説、遠者來。
葉公問政。子曰、近者説、遠者來。
葉公政を問う。子曰く、近き者説べば、遠き者来る。
現代語訳
- 葉(知事)さまが政治のことをきく。先生 ――「近くの人がよろこべば、遠くの人もやってきます。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 楚の大夫、葉公が政治のやり方をたずねた。孔子様がおっしゃるよう、「近所の人民が悦び服するようになれば遠方の者も徳を慕って来り集ります。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 葉公が政道についてたずねた。先師はこたえられた。――
「領内の人民が悦服すれば、領外の者も慕ってまいりましょう」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 葉公 … 春秋時代、楚の重臣。姓は沈、名は諸梁、字は子高。「葉」は、人名・地名のときは「しょう」と読む。
- 説 … 「よろこぶ」と読む。「悦」に同じ。
- 来 … 仁政を慕い、寄って来る。
補説
- 『注疏』に「此の章は楚の葉の県公、為政の法を孔子に問うなり」(此章楚葉縣公問爲政之法於孔子也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 『集解』には、この章の注なし。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 葉公問政 … 『義疏』に「葉公も亦た孔子に政を為すの道を問うなり」(葉公亦問孔子爲政之道)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 子曰、近者説、遠者来 … 『義疏』に「言うこころは為政の道は、若し能く近民をして懽悦せしめば、則ち遠人来たり至るなり。江熙云う、辺国の人、豪気除かず、物情附あず、故に以て近きを悦ばしめて之を諭すなり、と」(言爲政之道、若能使近民懽悅、則遠人來至也。江熙云、邊國之人、豪氣不除、物情不附、故以悅近諭之)とある。また『注疏』に「当に恵を近き者に施し、之をして喜説せしむべくんば、則ち遠き者は当に化を慕いて来たるべきなり」(當施惠於近者、使之喜説、則遠者當慕化而來也)とある。また『集注』に「其の沢を被れば則ち悦び、其の風を聞けば則ち来たる。然れども必ず近き者悦び、而して後に遠き者来たるなり」(被其澤則悦、聞其風則來。然必近者悦、而後遠者來也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「夫れ政を為すには、人心を得るを以て本と為す。故に夫子葉公此を以て民情を験して、自ら其の得失を考えんことを欲したるなり」(夫爲政、以得人心爲本。故夫子欲葉公以此驗民情、而自考其得失也)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「近き者説べば、則ち遠き者来たる、葉公唯だ遠きを来たさんことを務めて、近き者をして悦ばしむることを知らず。故に孔子此れを以て之に語ぐ。後人古言を知らず、故に則の字無きときは、則ち対説と為す。非なり。邢昺の疏尚お古義を失わず」(近者説、則遠者來、葉公唯務來遠、而不知使近者悦。故孔子以此語之。後人不知古言、故無則字、則爲對説。非矣。邢昺疏尚不失古義)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
こちらの章もオススメ!
学而第一 | 為政第二 |
八佾第三 | 里仁第四 |
公冶長第五 | 雍也第六 |
述而第七 | 泰伯第八 |
子罕第九 | 郷党第十 |
先進第十一 | 顔淵第十二 |
子路第十三 | 憲問第十四 |
衛霊公第十五 | 季氏第十六 |
陽貨第十七 | 微子第十八 |
子張第十九 | 堯曰第二十 |