顔淵第十二 19 季康子問政於孔子曰章
297(12-19)
季康子問政於孔子曰。如殺無道。以就有道。何如。孔子對曰。子爲政。焉用殺。子欲善而民善矣。君子之德風。小人之德草。草上之風必偃。
季康子問政於孔子曰。如殺無道。以就有道。何如。孔子對曰。子爲政。焉用殺。子欲善而民善矣。君子之德風。小人之德草。草上之風必偃。
季康子、政を孔子に問いて曰く、如し無道を殺して、以て有道を就かば、何如。孔子対えて曰く、子、政を為すに、焉んぞ殺を用いん。子善を欲すれば民善なり。君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を上うれば必ず偃す。
現代語訳
- 季孫さんが政治のことを孔先生にきき、 ―― 「まともでないやつは殺して、スジを通しては、どうでしょう。」孔先生の答え ―― 「政治をなさるのに、殺さなくたっていいでしょう。あなたしだいで、人民もおとなしくなります。上の人が風なら、しもじもは草です。草は風のちからで、きっとなびきます。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 季康子が政治について先師にたずねていった。――
「もし無道な者を殺して有道な者を保護するようにしたらいかがでしょう」
先師がこたえられた。
「政治を行なうのに人を殺す必要がどこにありましょう。あなたが、もし真に善をお望みであれば、人民はおのずから善に向います。為政者と人民との関係は風と草との関係のようなもので、風が吹けば草は必ずその方向になびくものでございます」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 季康子 … 魯の国の大夫。姓は季孫、名は肥、康は諡。魯の三人の家老の一人。ウィキペディア【三桓氏】参照。
- 如 … 「もし~せば」と読み、「もし~ならば」と訳す。
- 無道 … 道徳にはずれた悪い行いをする人。無法者。
- 有道 … 道徳のある者。道を守る者。
- 就 … 親しみ就く。助ける。育成する。指導に従わせる。
- 何如 … 「いかん」と読む。
- 対 … 目上の人に答えるときに用いる。
- 焉用殺 … 「いずくんぞさつをもちいん」または「いずくんぞころすをもちいん」と読み、「どうして殺す必要がありましょうか」と訳す。
- 而 … 「則」に同じ。
- 偃 … 「ふす」と読み、「なびく」と訳す。
補説
- 就 … 『集解』に「就は成すなり」(就成也)とあり、「援助完成する」と訳す。
- 君子之徳風。小人之徳草 … 『義疏』では「君子之徳風也。小人之徳草也」に作る。
- 上 … 加える。『義疏』では「尚」に作る。
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