顔淵第十二 14 子張問政章
292(12-14)
子張問政。子曰、居之無倦、行之以忠。
子張問政。子曰、居之無倦、行之以忠。
子張、政を問う。子曰く、之に居りて倦むこと無く、之を行うに忠を以てす。
現代語訳
- 子張が政治のことをきく。先生 ――「身をいれてネバり、まごころをつくすこと。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 子張が政治のやり方をおたずねした。孔子様がおっしゃるよう、「その職に専らであれ。あきてはいけない。仕事をするに忠実であれ。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 子張が政治のやり方についてたずねた。先師はこたえられた。――
「職務に専念して、辛抱づよく、真心をこめてやりさえすれば、それでいいのだ」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 子張 … 前503~?。孔子の弟子。姓は顓孫、名は師、字は子張。陳の人。孔子より四十八歳年少。ウィキペディア【子張】参照。
- 居之 … 「之」は、政治家の地位を指す。「居」は、身を置く。位にいる。従事する。
- 無倦 … 飽きることなく。「倦」は、物事に飽きて、いやになること。
- 行之 … 「之」は、政治、政策、政治家としての職務などを指す。「行」は、実行する。遂行する。
- 以忠 … 忠実に。誠意をもって。誠実をもって。
補説
- 『注疏』に「此の章の言うこころは為政の道は、若し之を身に居きては、解倦する無し。之を民に行うには、必ず忠信を以てするなり」(此章言爲政之道、若居之於身、無解倦。行之於民、必以忠信也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 子張 … 『史記』仲尼弟子列伝に「顓孫師は陳の人。字は子張。孔子より少きこと四十八歳」(顓孫師陳人。字子張。少孔子四十八歳)とある。ウィキソース「史記/卷067」参照。また『孔子家語』七十二弟子解に「顓孫師は陳人、字は子張。孔子より少きこと四十八歳。人と為り容貌資質有り。寬沖にして博く接し、従容として自ら務むるも、居りて仁義の行いを立つるを務めず。孔子の門人、之を友とするも敬せず」(顓孫師陳人、字子張。少孔子四十八歳。為人有容貌資質。寬沖博接、從容自務、居不務立於仁義之行。孔子門人、友之而弗敬)とある。ウィキソース「孔子家語/卷九」参照。
- 子張問政 … 『義疏』に「政を為すの方法を問うなり」(問爲政方法也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 子曰、居之無倦、行之以忠 … 『集解』に引く王粛の注に「言うこころは政を為すの道は、之を身に居きては、解倦するを得ること無く、之を民に行いては、必ず忠信を以てするなり」(言爲政之道、居之於身、無得解倦、行之於民、必以忠信也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「答えて云う、身政事に居きては、則ち懈倦すること莫きを言う。又た凡そ民に行い用うる所の者は、必ず忠信を尽くすなり」(答云、言身居政事、則莫懈倦。又凡所行用於民者、必盡忠信也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『集注』に「居は、諸を心に存するを謂う。倦むこと無ければ、則ち始終一の如し。行は、事を発するを謂う。忠を以てすれば、則ち表裏一の如し」(居、謂存諸心。無倦、則始終如一。行、謂發於事。以忠、則表裏如一)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 『集注』に引く程頤の注に「子張仁少なく、誠心に民を愛すること無ければ、則ち必ず倦みて心を尽くさず。故に之に告ぐるに此を以てす」(子張少仁、無誠心愛民、則必倦而不盡心。故告之以此)とある。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「其の外を願わざれば、則ち自ら倦むこと無く、之を視ること猶お己の事のごとくすれば、則ち必ず忠を以てす。倦むこと無ければ則ち功を見ること速やかなり。忠を以てすれば則ち事必ず成る。此の二者は政を為すの至要なり」(不願乎其外、則自無倦、視之猶己事、則必以忠。無倦則見功速矣。以忠則事必成矣。此二者爲政之至要也)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「居とは、仁に居るの居の如く、身政に居るなり。政を視ること其の家事の如くするを謂うなり。是れ心を以て之を言う。忠とは己の心を尽くし、委曲詳悉す。是れ事を以て之を言う」(居者如居仁之居。身居於政也。謂視政如其家事也。是以心言之。忠者盡己之心。委曲詳悉。是以事言之)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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