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八佾第三 19 定公問章

059(03-19)
定公問、君使臣、臣事君、如之何。孔子對曰、君使臣以禮、臣事君以忠。
定公ていこうう、きみしん使つかい、しんきみつかうるには、これ如何いかんせん。こうこたえていわく、きみしん使つかうにれいもってし、しんきみつかうるにちゅうもってす。
現代語訳
  • 定(テイ)(殿)さまのおたずね ―― 「殿が使い、家来がつかえる、その方法は…。」孔先生の返事 ―― 「使うには手あつくしてやり、つかえるには心をこめます。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 定公ていこうが「君が臣を使い、臣が君につかえるには、どうあるべきだろうか。」とたずねた。孔子が答えて申すよう、「君たる者は礼を以て臣を使い、臣たる者は忠を以て君に事うべきであります。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 定公ていこうがたずねられた。――
    「君主が臣下を使う道、臣下が君主に仕える道についてききたいものだ」
    先師がこたえられた。――
    「君主が臣下を使う道は礼の一語につきます。臣下が君主に仕える道は忠の一語につきます」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 定公 … ?~前495。魯の君主。在位前509~前495。名は宋。襄公の子、昭公の弟、哀公の父。孔子を大臣に抜擢した。ウィキペディア【定公 (魯)】参照。
  • 忠 … 真心を尽くす。誠意を尽くす。
補説
  • 『注疏』に「此の章は君臣の礼を明らかにするなり」(此章明君臣之禮也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 定公問、君使臣、臣事君、如之何 … 『集解』に引く孔安国の注に「定公は、魯君のおくりななり。時に臣、礼を失し、定公之を患う。故に問うなり」(定公、魯君謚也。時臣失禮、定公患之。故問也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「定公は、哀公の父なり。亦た礼を失いて臣服せず。定公之を患う。故に孔子に君は臣を使う、臣は君に事うるの法礼を求めんことを問うなり」(定公、哀公父也。亦失禮而臣不服。定公患之。故問孔子求於君使臣、臣事君之法禮也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「定公は、魯君なり。時に臣礼を失い、君は使うこと能わず、定公之を患う。故に孔子に問いて曰く、君の臣を使うこと、及び臣の君に事うること、当に之を如何にすべきや、と」(定公、魯君也。時臣失禮、君不能使、定公患之。故問於孔子曰、君之使臣、及臣之事君、當如之何也)とある。また『集注』に「定公は、魯の君、名は宋」(定公、魯君、名宋)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 孔子対曰、君使臣以礼、臣事君以忠 … 『義疏』に「孔子は定公を斥くるに因りて答うるなり。言うこころは臣の君に従うは、草の風に従うが如し。故に君能く臣を使うに礼を得れば、則ち臣、君に事うるに必ず忠を尽くすなり。君若し礼無くんば、則ち臣も亦た忠ならざるなり」(孔子答因斥定公也。言臣之從君、如草從風。故君能使臣得禮、則臣事君必盡忠也。君若無禮、則臣亦不忠也)とある。また『注疏』に「礼は以て国家を安んじ、社稷を定む可きも、だ君の礼を用いざるに由りて、則ち臣は忠をくさざるを言う。故に対えて曰く、君の臣を使うに礼を以てすれば、則ち臣は必ず君に事うるに忠を以てするなり、と」(言禮可以安國家、定社稷、止由君不用禮、則臣不竭忠。故對曰、君之使臣以禮、則臣必事君以忠也)とある。また『集注』に「二者は皆理の当然にして、各〻自ら尽くさんことを欲するのみ」(二者皆理之當然、各欲自盡而已)とある。
  • 『集注』に引く呂大臨の注に「臣を使うに其の忠ならざるを患えず、礼の至らざるを患う。君に事うるに其の礼無きを患えず、忠の足らざるを患う」(使臣不患其不忠、患禮之不至。事君不患其無禮、患忠之不足)とある。
  • 『集注』に引く尹焞の注に「君臣は義を以て合する者なり。故に君、臣を使うに礼を以てすれば、則ち臣、君に事うるに忠を以てす」(君臣以義合者也。故君使臣以禮、則臣事君以忠)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「尊を以て卑に臨むは、以て簡なり易し。故に君たるの道は、臣を使うに礼を以てするに在り。下を以て上に事うるは、以てあざむき易し。故に臣たるの道は、君に事うるに忠を以てするに在り。……仏老異端の書の、高遠奇特を以て、之を求めて得可きが若きに非ざるなり」(以尊臨卑、易以簡。故爲君之道、在使臣以禮。以下事上、易以欺。故爲臣之道、在事君以忠。……非若佛老異端之書、可以高遠奇特、求之而得也)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「君、臣を使うに礼を以てすれば、臣、君に事うるに忠を以てす。古文辞の簡なるのみ。何となれば、定公の問いなればなり。臣なる者は君のともに天職をともにする所なり。故に君は臣を使うに礼を以てす。臣なる者は君の事に代わる者なり、故に臣は君に事うるに忠を以てす。然れども之を施すこと必ず君より始む。但だ簡なり易くあざむき易しを以て之を言うは、弊を補うの言のみ」(君使臣以禮、臣事君以忠。古文辭簡爾。何者、定公之問也。臣者君之所與共天職也。故君使臣以禮。臣者代君之事者也、故臣事君以忠。然施之必由君始焉。但以易簡易欺言之、補弊之言耳)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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