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登岳陽楼(杜甫)

登岳陽樓
岳陽楼がくようろうのぼ
杜甫とほ
  • 五言律詩。樓・浮・舟・流(平声尤韻)。
  • 『全唐詩』巻二百三十三所収。ウィキソース「登岳陽樓」参照。
  • 詩題 … 『文苑英華』では「登岳陽樓望洞庭」に作る。
  • 岳陽楼 … 湖南省岳陽市にある高楼。洞庭湖に面している。ウィキペディア【岳陽楼】参照。
  • 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。じょうよう(湖北省)の人。あざな子美しび。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝しゅくそうのもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くのかんけいに草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜りと」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
昔聞洞庭水
むかしく 洞庭どうていみず
  • 昔聞 … 昔からうわさを聞いている。
  • 洞庭水 … 洞庭湖。湖南省北部にある。「水」は湖を指す。ウィキペディア【洞庭湖】参照。
今上岳陽樓
いまのぼる 岳陽楼がくようろう
  • 今上 … かねてからの願いがかなって、今やっと(岳陽楼に)登ることができた。
呉楚東南坼
呉楚ごそ 東南とうなん
  • 呉楚 … 呉国と楚国。また、ここでは洞庭湖一帯の地方を指す。
  • 坼 … 割れる。二つに分かれる。
乾坤日夜浮
乾坤けんこん にちうか
  • 乾坤 … 天と地。『易経』説卦伝に「けんてんし、えんし、きみし、ちちし、ぎょくし、きんし、かんし、こおりし、大赤だいせきし、りょうし、ろうし、せきし、はくし、もくす。こんし、ははし、ぬのし、かまし、りんしょくし、ひとしし、子母しぼぎゅうし、だい輿し、あやし、しゅうし、し、けるやくろす」(乾爲天、爲圜、爲君、爲父、爲玉、爲金、爲寒、爲冰、爲大赤、爲良馬、爲老馬、爲瘠馬、爲駁馬、爲木果。坤爲地、爲母、爲布、爲釜、爲吝嗇、爲均、爲子母牛、爲大輿、爲文、爲衆、爲柄、其於地也爲黑)とある。ウィキソース「易傳/說卦」参照。
  • 日夜 … 昼も夜も。
  • 浮 … 水面に影を映して浮かび漂う。
親朋無一字
親朋しんぽう いち
  • 親朋 … 親戚と友人。
  • 無一字 … 一通の手紙も来ない。
老病有孤舟
ろうびょう しゅう
  • 老病 … 年老いて病身である。
  • 孤舟 … 一そうの小舟。
戎馬關山北
じゅう 関山かんざんきた
  • 戎馬 … 軍馬。兵馬。ここでは戦いを指す。
  • 関山 … 関所や山々。または、関所のある山。
憑軒涕泗流
けんりて ていなが
  • 軒 … 岳陽楼の手すり。
  • 憑 … よりかかる。『文苑英華』では「凭」に作る。
  • 涕泗 … 涙。目から出るのが「涕」。鼻から出るのが「泗」。
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