>   漢詩   >   唐詩選   >   巻六 五絶   >   伊州歌二首其二(無名氏)

伊州歌二首其二(無名氏)

伊州歌二首其二
伊(い)州(しゅう)歌(か)二(に)首(しゅ) 其(そ)の二(に)
無(む)名(めい)氏(し)
  • ウィキソース「春怨 (金昌緒)」参照。
  • この詩は、前の詩と同じく、出征した夫を思う妻の嘆きを詠んだもの。
  • 詩題 … 『全唐詩』巻七百六十八では金昌緒の作とし、詩題を「春怨」に作り、題下に「一作伊州歌」と注する。『唐詩三百首』でも金昌緒の作とし、詩題を「春怨」に作る。『唐詩別裁集』でも金昌緒の作とし、詩題を「春怨」に作り、題下に「一作無名氏伊州歌」と注する。『楽府詩集』巻七十九の「伊州歌五首」、及び『万首唐人絶句』五言・巻二十の「伊川歌五首」の中には、この詩はない。
  • 伊州歌 … 楽府題の一つ。『楽府詩集』巻七十九に「楽苑に曰く、伊州は、商調曲、西京(西涼の誤り)の節度蓋(がい)嘉(か)運(うん)の進むる所なり、と」(樂苑曰、伊州、商調曲、西京節度蓋嘉運所進也)とある。ウィキソース「樂府詩集/079卷」参照。伊州は、現在の新疆ウイグル自治区クムル市(哈密(ハミ)市)一帯を指す。ウィキペディア【クムル市】参照。
打起黃鶯兒
黄鶯(こうおう)児(じ)を打起(だき)して
  • 黄鶯児 … コウライウグイス。児は、名詞(小さなもの)のあとにつく助字。ウィキペディア【コウライウグイス】参照。『爾雅』釈鳥篇に「陸機の疏に云う、黄鳥は、黄(こう)鸝(り)留(りゅう)なり。或いは之を黄栗(こうりつ)留(りゅう)と謂う。幽州の人、之を黄鶯(こうおう)と謂う。一名は倉庚(そうこう)、一名は商(しょう)庚(こう)、一名は鵹(り)黄(こう)、一名は楚(そ)雀(じゃく)。斉人(せいひと)、之を搏黍(はくしょ)と謂う、と」(陸機疏云、黄鳥、黄鸝留也。或謂之黄栗留。幽州人謂之黄鶯。一名倉庚、一名商庚、一名鵹黄、一名楚雀。齊人謂之搏黍)とある。ウィキソース「爾雅註疏/卷10」参照。また、盛唐の王維「左(さ)掖(えき)の梨花」詩に「黄鶯弄(ろう)して足らず、銜(ふく)んで未央宮に入る」(黃鶯弄不足、銜入未央宮)とある。左掖は、宮城の正面の左の小門。ウィキソース「左掖梨花 (王維)」参照。
  • 打起 … ここでは、追い払う。追い立てる。飛び立たせる。口語表現。
  • 打 … 『全唐詩』には「一作卻」と注する。
莫教枝上啼
枝(し)上(じょう)に啼(な)かしむること莫(な)かれ
  • 莫教枝上啼 … 枝の上で鳴かせないでほしい。枝の上で鳴かないようにしておくれ。南朝陳の賀循「庭中に奇樹有りを賦し得たり」詩(『古詩紀』巻一百十六)に「香風飄(ひょう)舞(ぶ)して花間を度(わた)り、好鳥和(わ)鳴(めい)して枝上を飛ぶ」(香風飄舞花間度、好鳥和鳴枝上飛)とある。飄舞は、風に舞うこと。和鳴は、鳥が声を合わせて鳴くこと。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷116」参照。
  • 教 … 「(~をして)…せしむ」と読み、「(~に)…させる」と訳す。使役の助動詞。
  • 莫 … 「~(こと)なかれ」と読み、「~してはいけない」「~するな」と訳す。禁止の意を表す。「勿」も同じ。
啼時驚妾夢
啼(な)く時(とき)は妾(しょう)が夢(ゆめ)を驚(おどろ)かし
  • 啼時 … あれが鳴くと。『全唐詩』には「一作幾迴」と注する。こちらは「何度も」の意となる。
  • 妾 … 女性の一人称代名詞。わらわ。わたし。「古詩、焦仲(しょうちゅう)卿(けい)の妻の為の作」(『玉台新詠』巻一)に「妾は駆使(くし)に堪へず、徒(いたず)らに留まるも施す所無し」(妾不堪駆使、徒留無所施)とある。駆使は、こき使われること。ウィキソース「古詩為焦仲卿妻作」参照。
  • 驚妾夢 … わたしの夢が覚めてしまう。驚は、ここでは目を覚ますこと。
不得到遼西
遼(りょう)西(せい)に到(いた)るを得(え)ざらしむ
  • 遼西 … 遼河以西の地。現在の河北省北部から遼寧省西部に至る地域。ここで、女性の夫が守備についていた。ウィキペディア【遼西】参照。『漢書』地理志下、遼西郡の条の顔師古注に「秦置く。……幽州に属す」(秦置。……屬幽州)とある。『漢書評林』巻二十八(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『新唐書』地理志、平州の条に「平州の北平郡に、……黄(こう)花(か)、紫(し)蒙(もう)、白狼(はくろう)、昌(しょう)黎(れい)、遼西等、十二の戍有り」(平州北平郡、……有……黄花、紫蒙、白狼、昌黎、遼西等、十二戍)とある。ウィキソース「新唐書/卷039」参照。また、南朝梁の呉均の詩「柳(りゅう)惲(うん)と相贈答する六首」(『玉台新詠』巻六)の第三首に「願わくは春風を逐うて去り、飄(ひょう)蕩(とう)として遼西に至らん」(願逐春風去、飄蕩至遼西)とある。飄蕩は、流浪すること。ウィキソース「與柳惲相贈答」参照。
  • 不得到 … (夢が覚めて)行けなくなってしまうから。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 啼・西(平声齊韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻七百六十八(排印本、中華書局、1960年)※作者:金昌緒、詩題:春怨として収録
  • 『唐詩三百首注疏』巻六上・五言絶句(廣文書局、1980年)※作者:金昌緒、詩題:春怨として収録
  • 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十五([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)※作者:金昌緒、詩題:春怨として収録
  • 『古今詩刪』巻二十(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
歴代詩選
古代 前漢
後漢 魏
晋 南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
金 元
明 清
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行