九日藍田崔氏荘(杜甫)
九日藍田崔氏荘
九日、藍田の崔氏の荘にて
九日、藍田の崔氏の荘にて
- 七言律詩。寬・歡・冠・寒・看(平声寒韻)。
- 『全唐詩』巻224所収。ウィキソース「九日藍田崔氏莊」参照。
- 九日 … 陰暦九月九日、重陽の節句。
- 藍田 … 長安の東南、終南山の麓にある形勝の地。
- 崔氏 … 人物については不明であるが、母方の親戚と思われる。
- 荘 … 別荘。
- 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。字は子美。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛宗のもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣花渓に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
老去悲秋強自寬
老い去って悲秋 強いて自ら寛うす
- 老去 … だんだん年をとっていくこと。
- 悲秋 … もの悲しい秋。
- 寛 … 気持ちをひろく持つこと。
興來今日盡君歡
興来って今日 君が歓を尽す
- 興来 … 興のわくままに。
- 今 … 『全唐詩』には「一作終」とある。
- 尽君歓 … あなたのもてなしを十分に受けつくす。
羞將短髮還吹帽
羞ずらくは短髪を将て還た帽を吹かるるを
- 羞 … 恥ずかしい。
- 短髪 … 年をとって短く薄くなった髪の毛。
- 将 … 以てと同じ。
- 吹帽 … 風に帽子を吹き飛ばされる。晋の孟嘉が帽子を吹き飛ばされ、桓温が人に文章を作らせてからかったが、孟嘉は平然と名文をもってそれに答えたという『晋書』に見える故事を踏まえる。
笑倩旁人爲正冠
笑って旁人に倩みて為に冠を正さしむ
- 旁人 … 隣りの人。
- 倩 … 人の手を借りること。
藍水遠從千澗落
藍水は遠く千澗より落ち
- 藍水 … 藍田の附近を流れる川の名。
- 千澗 … 多くの谷間。
玉山高竝兩峯寒
玉山は高く両峰と並べて寒し
- 玉山 … 藍田山。
- 並両峰 … 玉山を真ん中にはさんで二つの峰を並べる。
明年此會知誰健
明年 此の会 知る 誰か健ならん
- 此会 … この宴会。
- 健 … 健在でいる。『全唐詩』には「一作在」とある。
醉把茱萸子細看
酔うて茱萸を把って子細に看る
- 酔 … 『全唐詩』には「一作再」とある。
- 茱萸 … 呉茱萸。和名カワハジカミ。重陽の節句に、丘に登るとき、髪に茱萸の実を刺して厄除けのしるしとする風習があったという。
- 把 … 手に持つ。
- 子細看 … しげしげと見ること。
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