曲江対酒(杜甫)
曲江對酒
曲江にて酒に対す
曲江にて酒に対す
- 七言律詩。歸・微・飛・違・衣(平声微韻)。
- 『全唐詩』巻225所収。ウィキソース「曲江對酒」参照。
- 曲江 … 長安の東南にあった池の名。曲江池。
- 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。字は子美。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛宗のもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣花渓に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
苑外江頭坐不歸
苑外の江頭 坐して帰らず
- 苑外 … 離宮の御苑の外。苑は芙蓉苑を指す。
- 江頭 … 曲江のほとり。
水精宮殿轉霏微
水精の宮殿 転た霏微
- 水精宮殿 … 水晶で造った美しい宮殿。
- 宮 … 『全唐詩』では「春」に作り、「一作宮」とある。
- 転 … いよいよ。ますます。
- 霏微 … もとは雨や雪などがちらつく形容であるが、ここでは水晶の宮殿がきらきらと光るさまをいう。
桃花細逐楊花落
桃花は細かに楊花を逐うて落ち
- 細逐楊花落 … 『全唐詩』には「一作欲共梨花語」とある。
- 楊花 … 柳の綿毛。柳絮。
黄鳥時兼白鳥飛
黄鳥は時に白鳥を兼ねて飛ぶ
- 黄鳥 … ウグイス。
- 時 … 『全唐詩』には「一作仍」とある。
- 白鳥 … しらさぎ。
- 兼 … ~とともに。
縱飮久判人共棄
飲を縦にして久しく判す 人共に棄つるを
- 縦飲 … ほしいままに酒を飲むこと。
- 判 … ここでは世間の付き合いを放棄するの意。「拚」に作るテキストもある。同義。
- 人共棄 … 世の中の人がみな自分を見捨てる。
懶朝眞與世相違
懶朝 真に世と相違う
- 懶朝 … 朝廷へ出仕するのを怠ること。
吏情更覺滄洲遠
吏情更に覚ゆ 滄洲の遠きを
- 吏情 … 官吏としての心情。
- 吏 … 『全唐詩』には「一作含」とある。
- 滄洲 … 東海にあるという仙人の住む所。謝朓の「宣城に之かんとして新林浦を出で版橋に向う」(『文選』巻二十七)に「既に禄を懐うの情を懽ばしめ、復た滄州の趣に協う」(既懽懷祿情、復協滄州趣)とある。ウィキソース「昭明文選/卷27」参照。
老大徒傷未拂衣
老大 徒らに傷んで未だ衣を払わず
- 老大 … 年をとること。
- 徒 … 『全唐詩』では「悲」に作る。
- 徒傷 … むなしく嘆きをかこつ。
- 払衣 … ここでは官職を辞すること。
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