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送李太守赴上洛(王維)

送李太守赴上洛
太守たいしゅじょうらくおもむくをおく
おう
  • 〔テキスト〕 『王右丞文集』巻五(静嘉堂文庫蔵、略称:静嘉堂本)、『王摩詰文集』巻九(略称:蜀刊本)、『須渓先生校本唐王右丞集』巻五(『四部叢刊 初篇集部』所収)、顧起経注『類箋唐王右丞詩集』巻七(略称:顧起経注本)、顧可久注『唐王右丞詩集』巻五(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、略称:顧可久注本)、趙殿成注『王右丞集箋注』巻十二(略称:趙注本)、『唐詩選』巻四、『全唐詩』巻一百二十七、『文苑英華』巻二百六十八、『唐詩品彙』巻七十四、他
  • 五言排律。沈・深・林・陰・岑・心(平声侵韻)。
  • ウィキソース「送李太守赴上洛」参照。
  • 李太守 … 人物については不明。「太守」は郡の長官。
  • 上洛 … 春秋時代の晋代から陝西省商県を中心に置かれた郡。上洛郡。唐代はおおむね商州と呼ばれた。ウィキペディア【上洛郡】参照。
  • この詩は、上洛郡の太守となって赴任する李某を見送って作ったもの。
  • 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。あざなきつ。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられてしょうじょゆうじょう(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞集』十巻(または六巻)がある。ウィキペディア【王維】参照。
商山包楚鄧
しょうざん とうつつ
  • 商山 … 陝西省商県の東にある山。李某が赴任して行く先にある。
  • 包楚鄧 … 楚の国と鄧州を包むようにそびえる。「楚」は商山の南、湖北省一帯の地。「鄧」は商山の東、河南省南陽一帯の地。
積翠藹沈沈
積翠せきすい あいとして沈沈ちんちんたり
  • 積翠 … 山腹に幾重にも積み重なる木々の緑。青山の形容。
  • 藹 … 木々がこんもりと茂っているさま。底本(冨山房『漢文大系』)では「靄」に作るが、諸本に従い改めた。
  • 沈沈 … 木々が深々と茂っているさま。畳韻(二字が同じ母音で終わる)語。
驛路飛泉灑
えき せんそそ
  • 駅路 … 宿場から宿場へ通じている街道。うまやじ。
  • 飛泉 … 飛び散る滝水。
  • 灑 … そそぐ。そそぎかかる。
關門落照深
関門かんもん らくしょうふか
  • 関門 … 関所の門。上洛郡の東にあった関所、武関を指す。
  • 落照 … 夕日の光。落日の光。
  • 深 … 深く差し込んでいるだろう。
野花開古戍
野花やか じゅひら
  • 野花 … 野原に咲く花。野辺の花。
  • 古戍 … 古びたとりで
  • 開 … 咲き乱れる。
行客響空林
行客こうかく 空林くうりんひび
  • 行客 … 旅人。
  • 空林 … ひとのないひっそりとした林。
  • 響 … 足音が響く。
板屋春多雨
板屋はんおく はる あめおお
  • 板屋 … 板ぶきの屋根。粗末な民家のことをいう。
  • 春多雨 … 春の季節、雨がしきりと降りそそぐ。
山城晝欲陰
さんじょう ひる くもらんとほっ
  • 山城 … 山間やまあいの町。山峡やまかいの町。
  • 昼 … 昼でも。
  • 欲陰 … 薄暗くなりかける。
丹泉通虢略
丹泉たんせん かくりゃくつう
  • 丹泉 … 川の名。丹江。古称は丹水。商県のあたりを東南に流れ、漢水に合流する。
  • 虢略 … 河南省霊宝市の西南、函谷関の近くにあった町。
白羽抵荊岑
はく 荊岑けいしんいた
  • 白羽 … 春秋時代、河南省内郷県にあった地名。
  • 荊岑 … 荊山の峰。「荊山」は、湖北省西北部、なんしょう県の西にある山。「岑」は、みね。
  • 抵 … 至る。
若見西山爽
西山せいざんそう
  • 若見 … もし君が~を見たなら。
  • 西山爽 … 西山に漂う爽やかな大気。「西山」は商山のこと。『世説新語』簡傲かんごう篇に、東晋のおう徽之きし(?~388)の言葉として、「西山は朝来、致に爽気有り」(西山朝來、致有爽氣)とあるのを踏まえる。
應知黃綺心
まさこうこころるべし
  • 応知 … きっと~を理解することだろう。
  • 黄綺 … こうこう綺里季きりきのこと。これに東園公とうえんこうろく先生を加えて「商山こう」という。四人は秦代末期、秦の暴政を避けて商山に隠棲した高士。みなしゅ皓白こうはくであったので「四皓」と呼ばれた。
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