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玉台観(杜甫)

玉臺觀
玉台観ぎょくだいかん
杜甫とほ
  • 五言律詩。遊・留・洲・頭(平声尤韻)。
  • 玉台観 … 唐の高宗の子、滕王とうおう元嬰げんえい(?~684年)が閬州ろうしゅうの刺史であったときに作った道観どうかん(道教の寺院)。
  • 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。じょうよう(湖北省)の人。あざな子美しび。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝しゅくそうのもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くのかんけいに草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜りと」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
浩劫因王造
浩劫こうごう 王造おうぞう
  • 浩劫 … 仏教語で未来永劫にわたる時間。ここでははるかな昔の意。
  • 王造 … 滕王の造営。
  • 造 … 『全唐詩』には「一作起」とある。
平臺訪古遊
平台へいだい 古遊こゆう
  • 平台 … 梁の孝王の築いた台。玉台観をそれになぞらえている。
  • 古遊 … 古人遊賞の跡。
綵雲蕭史駐
綵雲さいうん 蕭史しょうしとどまり
  • 綵雲 … 五色の雲。
  • 蕭史 … 人名。蕭の名人で、秦の穆公(在位前659~前621)の娘、弄玉を娶り、ふたりで蕭を吹いて暮らしていたが、のちに仙人となって昇天した。滕王を蕭史になぞらえている。『列仙伝』巻上に「蕭史は、秦の穆公の時の人なり。善く簫を吹き、能く孔雀・白鶴を庭に致す。穆公にむすめ有り、あざなは弄玉、之を好む。公ついに女を以てめあわす。日〻ひび弄玉に鳳鳴を作すを教う。居ること数年、吹くこと鳳声に似たり。鳳凰きたりて其のおくとどまる。公ために鳳台を作るに、夫婦其の上に止まり、下らざること数年、一日、皆鳳凰に随って飛び去る。故に秦人しんぴと為に鳳女ほうじょを雍宮中に作るに、時に簫声有るのみ」(蕭史者、秦穆公時人也。善吹簫、能致孔雀白鶴於庭。穆公有女、字弄玉、好之。公遂以女妻焉。日教弄玉作鳳鳴。居數年、吹似鳳聲。鳳凰來止其屋。公爲作鳳臺、夫婦止其上、不下數年、一日、皆隨鳳凰飛去。故秦人爲作鳳女祠於雍宮中、時有簫聲而已)とある。ウィキソース「列仙傳」参照。
文字魯恭畱
文字もんじ 魯恭ろきょうとどまる
  • 魯恭 … 魯の恭王、劉余。宮殿造営のため、孔子の旧宅を取り壊したところ、壁の中から古文の経書が出てきた。滕王を恭王になぞらえている。
宮闕通羣帝
きゅうけつ 群帝ぐんていつう
  • 宮闕 … 宮殿の門。
  • 群帝 … 天上の神々。
乾坤到十洲
乾坤けんこん 十洲じっしゅういた
  • 乾坤 … 天と地。『易経』説卦伝に「けんてんし、えんし、きみし、ちちし、ぎょくし、きんし、かんし、こおりし、大赤だいせきし、りょうし、ろうし、せきし、はくし、もくす。こんし、ははし、ぬのし、かまし、りんしょくし、ひとしし、子母しぼぎゅうし、だい輿し、あやし、しゅうし、し、けるやくろす」(乾爲天、爲圜、爲君、爲父、爲玉、爲金、爲寒、爲冰、爲大赤、爲良馬、爲老馬、爲瘠馬、爲駁馬、爲木果。坤爲地、爲母、爲布、爲釜、爲吝嗇、爲均、爲子母牛、爲大輿、爲文、爲衆、爲柄、其於地也爲黑)とある。ウィキソース「易傳/說卦」参照。
  • 十洲 … 仙人の島。
人傳有笙鶴
ひとつたう 笙鶴しょうかく
  • 人伝 … 人々の言い伝えによれば。
  • 笙鶴 … 笙を吹く仙人を乗せた鶴。ここでは王子喬の故事を踏まえる。『列仙伝』巻上に「王子喬は、周の霊王の太子晋なり。好んで笙を吹き、鳳凰の鳴を作す。伊洛の間に遊ぶ。……白鶴に乗じて山頭にとどまる」(王子喬者、周靈王太子晉也。好吹笙、作鳳凰鳴。游伊洛之間。……乘白鶴駐山頭)とある。ウィキソース「列仙傳」参照。
時過北山頭
とき北山ほくざんほとりぐと
  • 北山 … 玉台山を指す。
  • 北 … 『全唐詩』では「此」に作り、「一作北」とある。
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