題玄武禅師屋壁(杜甫)
題玄武禪師屋壁
玄武禅師の屋壁に題す
玄武禅師の屋壁に題す
- 五言律詩。州・流・鷗・遊(平声尤韻)。
- 玄武禅師 … 不詳。「禅師」は徳の高い禅宗の僧。
- 題玄武禪師屋壁 … 『全唐詩』には題下に「屋在中江大雄山」とある。
- 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。字は子美。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛宗のもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣花渓に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
何年顧虎頭
何れの年か顧虎頭
- 顧虎頭 … 晋代の有名な画家、顧愷之(344?~405?)。字は長康。虎頭は若い頃の字。
滿壁畫滄洲
満壁 滄洲を画く
- 満壁 … 壁いっぱいに。
- 壁 … 『全唐詩』には「一作座」とある。
- 滄洲 … 東方の海上にあり、仙人が住むといわれていた所。謝朓の「宣城に之かんとして新林浦を出で版橋に向う」(『文選』巻二十七)に「既に禄を懐うの情を懽ばしめ、復た滄州の趣に協う」(既懽懷祿情、復協滄州趣)とある。ウィキソース「昭明文選/卷27」参照。
- 滄 … 『全唐詩』では「瀛」に作り、「一作滄」とある。
赤日石林氣
赤日 石林の気
- 赤日 … 真っ赤に輝く太陽。
- 石林 … 石がそびえたっているところ。
青天江海流
青天 江海の流れ
- 江海 … 大きな川と海。
- 海 … 『全唐詩』には「一作水」とある。
錫飛常近鶴
錫飛んで常に鶴に近く
- 錫飛常近鶴 … 梁の高僧宝誌が道士の白鶴道人と山中に住もうと約束し、まず道士が飼っていた鶴を飛ばすと、目指す山の麓に舞い降りた。次に宝誌が投げた錫杖が同じ山の麓に突き立った。ふたりはそれぞれの場所に庵室を作ったという故事。
杯渡不驚鷗
杯渡って鷗を驚かさず
- 杯渡 … 劉宋の頃、ひとりの高僧が木杯に乗って川を渡ったという、『高僧伝』巻第十に見える故事。
- 不驚鷗 … 海岸に住む人が、日頃カモメの群れと無心に遊んでいたが、ある日父の言いつけで捕まえに行くと、カモメはまったく近づいてこなかったという、『列子』に見える寓話を踏まえる。『列子』黄帝篇に「海上の人に、漚鳥を好む者有り。毎旦海上に之き、漚鳥従って游ぶ。漚鳥の至る者、百住にして止まず。其の父曰く、吾聞く、漚鳥皆汝に従って游ぶ。汝取り来れ、吾之を玩ばん、と。明日海上に之くに、漚鳥舞いて下らず」(海上之人、有好漚鳥者。每旦之海上、從漚鳥游。漚鳥之至者、百住而不止。其父曰、吾聞、漚鳥皆從汝游、汝取來、吾玩之。明日之海上、漚鳥舞而不下也)とある。ウィキソース「列子/黃帝篇」参照。
似得廬山路
廬山の路を得て
- 廬山 … 江西省九江市の南にある山の名。
眞隨惠遠遊
真に恵遠に随って遊ぶに似たり
- 恵遠 … 東晋の高僧。334年~416年。「慧遠」と表記するのが一般的。廬山の東林寺に住し、念仏結社の白蓮社を組織した。
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