石壁精舎還湖中作(謝霊運)[宋]
石壁精舍還湖中作
石壁精舎より湖中に還る作
石壁精舎より湖中に還る作
- 〔テキスト〕 『文選』巻二十二、『先秦漢魏晋南北朝詩』宋詩巻二、『古詩源』巻十 宋詩、『古詩賞析』巻十六 宋詩、他
- 五言古詩。暉・歸・微・霏・依・扉・違(平声微韻)、推(平声支韻)通押。
- ウィキソース「石壁精舍還湖中作」参照。
- 石壁精舎 … 謝霊運が故郷の始寧(今の浙江省上虞区付近)に建てた書斎。「石壁」は岩石の絶壁。「精舎」は本来、仏教寺院の意。
- 湖中 … 湖は巫湖。その南に石壁精舎があった。
- 謝霊運 … 385~433。南北朝時代、宋の詩人。字は宣明。陳郡陽夏(河南省)の人。晋の将軍謝玄の孫で康楽公の爵位を継いだ。傲慢な性格が災いし、永嘉(浙江省温州市)の太守に左遷された。のちに讒言にあって広州で処刑された。仏教にも詳しく、自然を好んで優れた山水詩を詠んだ。一族の謝恵連・謝朓とともに「三謝」と呼ばれる。ウィキペディア【謝霊運】参照。
昏旦變氣候
昏旦に気候変じ
- 昏旦 … 夕暮れと朝。「昏」は夕暮れ。「旦」は朝。
- 変気候 … 気候が変わる。気候が異なる。ここでは気候は、空気の変化の意。
山水含清暉
山水 清暉を含む
- 山水 … 山も水も。
- 清暉 … 清らかな光。清々しい光。
清暉能娛人
清暉 能く人を娯しましめ
- 娯 … 楽しませる。
遊子憺忘歸
遊子 憺として帰るを忘る
- 遊子 … 通常は旅人の意だが、ここでは単に、ここに遊びに来た人。
- 憺 … 心が静かに落ち着いているさま。心が安らかなさま。
出谷日尚早
谷を出でて 日 尚お早く
- 谷 … 石壁精舎のある谷。
- 早 … 「蚤」に作るテキストもある。「早」と同じく、「蚤く」と読む。
入舟陽已微
舟に入りて 陽 已に微なり
- 入舟 … 舟に乗って帰る頃には。
- 陽已微 … 日光がもう陰っている。
林壑斂暝色
林壑 暝色を斂め
- 林壑 … 林や谷。
- 暝色 … 夕暮れの色。
- 斂 … 深まる。
雲霞收夕霏
雲霞 夕霏を収む
- 雲霞 … 雲と霞。
- 夕霏 … 夕焼けの光。夕靄。夕暮れの霧。
- 収 … 次第に消えていく。
芰荷迭映蔚
芰荷 迭いに映蔚し
- 芰荷 … 水草の類。「芰」はヒシ。「荷」はハス。
- 迭 … 互いに。かわるがわる。
- 映蔚 … 互いに映り合って美しく茂っている様子。
蒲稗相因依
蒲稗 相因依す
- 蒲稗 … 水草の類。「蒲」はガマ。「稗」はヒエに似た水草。
- 相 … 互いに。
- 因依 … 寄り添い合う。
披拂趨南逕
披払して南径に趨き
- 披払 … 草を押し分ける。草を払いのける。
- 南径 … 南の小道。「径」は小道。
- 趨 … 「趨る」と読んでもよい。向かう。足ばやに行く。小走りに歩く。
愉悅偃東扉
愉悦して東扉に偃す
- 愉悦 … 楽しみ、喜ぶこと。
- 東扉 … 東の部屋。「扉」は、ここでは部屋の意。
- 偃 … 横になって休む。
慮澹物自輕
慮澹かにして 物自ずから軽く
- 慮 … 思い。心境。胸中。
- 澹 … 静か。安らか。
- 物 … 外物。世間の煩わしさ。
- 軽 … 苦にならなくなる。
意愜理無違
意愜いて 理違う無し
- 意 … 私の心。気持ち。
- 愜 … 満ち足りる。満足する。
- 理 … 自然の道理。または、本性。天性。
- 無違 … 違うことはない。そむくことがない。
寄言攝生客
言を寄す 摂生の客
- 寄言 … 一言申し上げよう。ちょっと言ってやろう。
- 摂生客 … 養生して長生きしようと努めている人。
試用此道推
試みに此の道を用て推せ
- 此道 … このような方法。このような生き方。「此道」は作者の行っている生き方。「慮澹かにして物自ずから軽く、意愜いて理違う無し」の二句を指す。
- 用 … ~をもって。「以」とほぼ同じ。
- 推 … 推し進める。実行してみる。
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