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自題中州集後五首其五(元好問)

自題中州集後五首其五
自(みずか)ら中州集(ちゅうしゅうしゅう)の後(のち)に題(だい)す五(ご)首(しゅ) 其(そ)の五(ご)
元(げん)好問(こうもん)
  • 〔テキスト〕 『遺山先生文集』巻十三(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
  • 七言絶句。官・殘・看(上平声寒韻)。
  • 自題中州集後 … 欽淑皇后二年(1249)、作者が長い歳月を費やして編纂した金代詩人の総集『中州集』が刊行された。この詩はその時の感想を述べたもの。五首連作の五番目。
  • 元好問 … 1190~1257。金の詩人。太原府忻(きん)州(しゅう)秀容県(山西省忻州市)の人。字(あざな)は裕(ゆう)之(し)、号は遺(い)山(ざん)。興定五年(1221)、進士に及第。正大元年(1224)、詞科に及第。地方官を歴任したが、天興二年(1233)、蒙古軍により国都汴京(べんけい)(河南省開封(かいほう)市)が陥落。翌年、金が滅亡。その後、元には仕官せず、亡国の民となって華北各地を遊歴した。金代の詩の総集『中州集』を編纂。詩文集『遺山先生文集』四十巻がある。ウィキペディア【元好問】参照。
平世何曾有稗官
平世(へいせい) 何(なん)ぞ曾(かつ)て稗官(はいかん)有(あ)らん
  • 平世 … 平和に治まった時代。
  • 何 … 「なんぞ」と読み、「どうして~か」と訳す。
  • 曾 … 「かつて」と読み、「かつて」「以前」と訳す。
  • 稗官 … 官職名。民間の風俗などに関するこまごまとした話を集めて記録する下級の役人。
亂來史筆亦燒殘
乱(らん)より来(このかた) 史(し)筆(ひつ)も亦(ま)た焼(しょう)残(ざん)す
  • 乱 … 天興二年(1233)、蒙古軍によって金が滅ぼされた戦乱を指す。
  • 来 … 「このかた」と読む。以来。以後。ある時点からのち、今まで。
  • 史筆 … 歴史書を書き記すときに用いる筆。
  • 亦 … 「(も)また~」と読み、「~もまた」「~も同様に」と訳す。
  • 焼残 … 焼かれてなくなる。焼失してしまう。残は、損なう。
百年遺藁天留在
百(ひゃく)年(ねん)の遺(い)藁(こう) 天(てん) 留(とど)めて在(あ)り
  • 百年 … 収国元年(1115)から天興三年(1234)までの金王朝百二十年を概数で言ったもの。
  • 遺藁 … 遺稿。残された原稿。すなわち、『中州集』に収録された金代の作家たちの原稿を指す。
  • 天留在 … 天はここに残しておいてくれた。天は留めておいてくれた。
抱向空山掩淚看
空山(くうざん)に抱(いだ)き 涙(なみだ)を掩(おお)いて看(み)る
  • 空山 … 人(ひと)気(け)のない寂しい山の中。南朝梁の江淹「無錫県歴山の集(つど)い」詩(『古詩紀』巻八十五)に「窃(ひそ)かに悲しむ 杜(と)蘅(こう)の暮、涕(なみだ)を擥(ぬぐ)いて 空山に弔う」(竊悲杜蘅暮、擥涕弔空山)とある。杜蘅は、植物の名。カンアオイ。ウィキペディア【カンアオイ】参照。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷085」参照。また、南朝梁の陶弘景の楽府「寒夜怨」(『楽府詩集』巻七十六)に「空山霜満ちて高煙(こうえん)平らかに、鉛(えん)華(か)沈み照らして帳(ちょう)孤(ひと)り明らかなり」(空山霜滿高煙平、鉛華沈照帳孤明)とある。高煙は、高(たか)嶺(ね)にかかる靄(もや)。鉛華は、おしろい。帳は、とばり。ウィキソース「樂府詩集/076卷」参照。
  • 向 … 於に同じ。読まない。動作の向かうところを示す前置詞。中世からの俗語。
  • 抱 … (完成した詩集を)抱きかかえて。抱きしめて。
  • 掩涙 … 涙をおさえながら。
  • 看 … 読む。
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