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去者日以疎(古詩十九首 其十四)

去者日以疎
もの日〻ひびもっうと
古詩こし十九じゅうきゅうしゅ じゅう
  • 〔テキスト〕 『文選』巻二十九、『先秦漢魏晋南北朝詩』漢詩巻十二、『古詩源』巻四 漢詩、『古詩賞析』巻四 漢詩、他
  • 五言古詩。親(平声真韻)、墳(平声文韻)、薪・人・因(平声真韻)通押。
  • ウィキソース「去者日以疎」参照。
  • この詩は、異郷にあって古い墓を見て無常を感じ、帰郷の念にかられた様子を詠んだもの。
  • 古詩十九首 … 『文選』巻二十九、雑詩の中に作者不詳として収められている五言古詩十九首のこと。前漢から後漢にかけて作られた作品。ウィキペディア【古詩十九首】参照。
去者日以疎
もの日〻ひびもっうと
  • 去者 … 主に「死んだ人」という解釈と、「去って行った人」という解釈とがある。ここでは「死者も含めて去って行った人」と解釈したい。なお、「過ぎ去った日日」という解釈もある。
  • 日以 … 日ごとに。
  • 疎 … 気持ちが離れて忘れられる。
來者日以親
きたもの日〻ひびもっした
  • 来者 … 身近にやって来た人。やって来て接する人。
  • 来 … 『李善注文選』では「生」に作る。この場合は、生きている人。
  • 親 … 親しくなる。親しみが増す。
出郭門直視
郭門かくもんでてちょくすれば
  • 郭門 … 町はずれにある城郭の門。「郭」は町の周囲を囲む城壁。
  • 直視 … まっすぐに見つめること。じっと見ること。
但見丘與墳
きゅうふんとを
  • 但 … 「ただ」と読み、「ただ~だけ」と訳す。限定の意を示す。
  • 丘 … 大きな墳墓。墓のある丘。「邱」に作るテキストもある。
  • 墳 … 土を丸く盛り上げて作った小さな墓。
  • 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB」と読む。「與」は「与」の旧字体。
古墓犁爲田
古墓こぼかれて
  • 古墓 … 古くなった墓地。
  • 犁 … 耕す。「犁」は、すき。土をおこす農具。すきで耕すこと。
  • 田 … 平らにならした耕地。耕作地。「田んぼ」「畑」ともに「田」という。
松柏摧爲薪
しょうはくくだかれてたきぎ
  • 松柏 … 松と柏(コノテガシワ)。墓地に植えられる木。天子の陵墓には松を植え、諸侯の陵墓には柏を植えたという。コノテガシワについては、ウィキペディア【コノテガシワ】参照。『詩経』商頌・殷武の詩に「景山けいざんのぼれば、しょうはく丸丸がんがんたり、うつし、まさけずる」(陟彼景山、松柏丸丸、是斷是遷、方斲是虔)とある。景山は、商の都に近くにある山の名。陟は、登る。丸丸は、すらりとよく伸びている様子。断は、切り取ること。遷は、運搬すること。斲は、斧で削ること。虔は、木を伐ること。ウィキソース「詩經/殷武」参照。
  • 摧 … 切り倒される。伐採される。
白楊多悲風
白楊はくよう ふうおお
  • 白楊 … はこやなぎ。ヤナギ科の落葉高木。墓地によく植えられた。ウィキペディア【ヤマナラシ】参照。
  • 悲風 … 物悲しく感じられる秋風。
蕭蕭愁殺人
蕭蕭しょうしょうとしてひとしゅうさつ
  • 蕭蕭 … 風が物寂しく吹く様子。
  • 愁殺 … ひどく寂しがらせる。深く悲しませる。殺は、程度の強いことを示す助辞。
思還故里閭
故里こりりょかえらんとおも
  • 故里閭 … 故郷の村里の入り口の門。転じて、故郷の村里の意。「故里」は故郷。「閭」は村里の入り口の門。また、「もとりょ」と読んでもよい。意味はほぼ同じ。
  • 還 … 故郷の村里に帰る。
欲歸道無因
かえらんとほっすれどもみち
  • 帰 … 上句の「還」と同じ。
  • 無因 … 手立てがない。
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