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行行重行行(古詩十九首 其一)

行行重行行
きてかさねて
古詩こし十九じゅうきゅうしゅ いち
  • 〔テキスト〕 『文選』巻二十九、『先秦漢魏晋南北朝詩』漢詩巻十二、『古詩源』巻四 漢詩、『古詩賞析』巻四 漢詩、『玉台新詠』巻一 雑詩九首、他
  • 五言古詩。離・涯・知・枝(平声支韻)/緩(上声旱韻)・返・晩・飯(上声阮韻)通押。換韻。
  • ウィキソース「行行重行行」参照。
  • この詩は、遠い旅に出ている夫を慕う妻の気持ちを詠んだもの。
  • 古詩十九首 … 『文選』巻二十九、雑詩の中に作者不詳として収められている五言古詩十九首のこと。前漢から後漢にかけて作られた作品。ウィキペディア【古詩十九首】参照。
行行重行行
きてかさねて
  • 行行重行行 … どんどんと遠くへ行ってしまう。今日も明日も旅を続けている。「行行」は「行く」という動作が何度も繰り返されることを示す。訓読は「ゆきゆきて」「ゆきゆき」のどちらでもよい。
與君生別離
きみきながらべつ
  • 君 … あなた。夫を指す。
  • 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB」と読む。「與」は「与」の旧字体。
  • 生別離 … 生きたままはなばなれになってしまう。生き別れ。
相去萬餘里
あいることばん余里より
  • 相 … お互いに。
  • 去 … 離れる。
  • 万余里 … 一万里以上。距離がたいへん遠いことを表す。「余」は、ある数を上まわる部分。
各在天一涯
各〻おのおのてん一涯いちがい
  • 各 … それぞれ。
  • 天一涯 … 天の一方の端と、もう一方の端。遠く離れていることを表す。
  • 在 … 暮らしている。身をおいている。
道路阻且長
どう にしてなが
  • 道路 … 二人の間にある道。
  • 阻 … 険しい。
  • 且 … 「かつ」と読み、「その上に」と訳す。
會面安可知
会面かいめん いずくんぞけん
  • 会面 … 顔を合わせること。「面」は顔。
  • 安 … 「いずくんぞ~ん(や)」と読み、「どうして~(する)のか、いや~ない」と訳す。反語の意を示す。
  • 安可知 … どうして知ることができようか、いやできない。
胡馬依北風
胡馬こば北風ほくふう
  • 胡馬依北風 … 北方のえびすの地から来た馬は、故郷を懐かしんで北風に身を寄せる。「胡馬」は北方の胡国に産した馬。「依」は身を寄せる。もたれる。
  • 依 … 『玉台新詠』では「いななく」(嘶)に作る。
越鳥巢南枝
えっちょうなんくう
  • 越鳥巣南枝 … 南方の越の国から来た鳥は、故郷を懐かしがり、南側へ伸びた枝に巣を作る。「越」は今の浙江省の辺り。この句は前句と対句になっている。当時のことわざで、故郷が忘れがたく、懐かしむことの喩え。
相去日已遠
あいることすでとお
  • 日 … 「ひびに」と読んでもよい。一日一日。日ごとに。日増しに。
  • 已 … ずいぶん。はなはだ。あまりにも。非常に。
衣帶日已緩
たい すでゆる
  • 衣帯日已緩 … 心配や悲しみのあまり、やせ細って着物の帯が緩くなってしまう。「衣帯」は着物の帯。
浮雲蔽白日
うん 白日はくじつおお
  • 浮雲蔽白日 … 空に浮かぶ雲が太陽の光を覆い隠しているように、二人の間が隔てられたこと。「白日」は夫の喩え。「浮雲」は、よその女性など、夫の心を惑わすもの。
遊子不顧返
ゆう へんせず
  • 遊子 … 旅人。夫を指す。
  • 不顧返 … (私のことを)振り返ってくれない。なお、「帰ろうともしない」と解釈する説もある。
思君令人老
きみおもえばひとをしていしむ
  • 思君 … あなたのことを思うと。
  • 令人老 … 私を老けこませる。「人」は作者である妻を指す。
  • 令 … 「令AB」の形で「AをしてB(せ)しむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。使役を表す。「使・遣・教」と同じ。
歲月忽已晚
歳月さいげつ たちますでれぬ
  • 忽 … あっという間に。知らぬ間に。
  • 晩 … 過ぎ去っていく。
棄捐勿復道
えんせらるるもからん
  • 棄捐 … あなたに見捨てられたとしても。文脈から「らるる」と受け身に読む。
  • 勿復道 … もう二度と愚痴を言うのはよしましょう。もうこれ以上恨み言を言うのはやめましょう。「道」は、言う。「勿復~」は「二度と~しない」と訳す。
努力加餐飯
りょくして餐飯さんぱんくわえよ
  • 努力 … つとめて。
  • 加餐飯 … 食事をとってください。食事に気をつけてください。健康に気をつけてください。お体を大切にしてください。当時の挨拶言葉。「餐飯」は食事。
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