行行重行行(古詩十九首 其一)
行行重行行
行き行きて重ねて行き行く
行き行きて重ねて行き行く
行行重行行
行き行きて重ねて行き行く
- 行行重行行 … どんどんと遠くへ行ってしまう。今日も明日も旅を続けている。「行行」は「行く」という動作が何度も繰り返されることを示す。訓読は「ゆきゆきて」「ゆきゆき」のどちらでもよい。
與君生別離
君と生きながら別離す
- 君 … あなた。夫を指す。
- 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB与」と読む。「與」は「与」の旧字体。
- 生別離 … 生きたまま離れ離れになってしまう。生き別れ。
相去萬餘里
相去ること万余里
- 相 … お互いに。
- 去 … 離れる。
- 万余里 … 一万里以上。距離がたいへん遠いことを表す。「余」は、ある数を上まわる部分。
各在天一涯
各〻天の一涯に在り
- 各 … それぞれ。
- 天一涯 … 天の一方の端と、もう一方の端。遠く離れていることを表す。
- 在 … 暮らしている。身をおいている。
道路阻且長
道路 阻にして且つ長し
- 道路 … 二人の間にある道。
- 阻 … 険しい。
- 且 … 「かつ」と読み、「その上に」と訳す。
會面安可知
会面 安んぞ知る可けん
- 会面 … 顔を合わせること。「面」は顔。
- 安 … 「いずくんぞ~ん(や)」と読み、「どうして~(する)のか、いや~ない」と訳す。反語の意を示す。
- 安可知 … どうして知ることができようか、いやできない。
胡馬依北風
胡馬は北風に依り
- 胡馬依北風 … 北方の胡の地から来た馬は、故郷を懐かしんで北風に身を寄せる。「胡馬」は北方の胡国に産した馬。「依」は身を寄せる。もたれる。
- 依 … 『玉台新詠』では「嘶く」(嘶)に作る。
越鳥巢南枝
越鳥は南枝に巣くう
- 越鳥巣南枝 … 南方の越の国から来た鳥は、故郷を懐かしがり、南側へ伸びた枝に巣を作る。「越」は今の浙江省の辺り。この句は前句と対句になっている。当時のことわざで、故郷が忘れがたく、懐かしむことの喩え。
相去日已遠
相去ること日に已に遠く
- 日 … 「ひびに」と読んでもよい。一日一日。日ごとに。日増しに。
- 已 … ずいぶん。はなはだ。あまりにも。非常に。
衣帶日已緩
衣帯 日に已に緩し
- 衣帯日已緩 … 心配や悲しみのあまり、やせ細って着物の帯が緩くなってしまう。「衣帯」は着物の帯。
浮雲蔽白日
浮雲 白日を蔽い
- 浮雲蔽白日 … 空に浮かぶ雲が太陽の光を覆い隠しているように、二人の間が隔てられたこと。「白日」は夫の喩え。「浮雲」は、よその女性など、夫の心を惑わすもの。
遊子不顧返
遊子 顧返せず
- 遊子 … 旅人。夫を指す。
- 不顧返 … (私のことを)振り返ってくれない。なお、「帰ろうともしない」と解釈する説もある。
思君令人老
君を思えば人をして老いしむ
- 思君 … あなたのことを思うと。
- 令人老 … 私を老けこませる。「人」は作者である妻を指す。
- 令 … 「令AB」の形で「AをしてB(せ)しむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。使役を表す。「使・遣・教」と同じ。
歲月忽已晚
歳月 忽ち已に晩れぬ
- 忽 … あっという間に。知らぬ間に。
- 晩 … 過ぎ去っていく。
棄捐勿復道
棄捐せらるるも復た道う勿からん
- 棄捐 … あなたに見捨てられたとしても。文脈から「らるる」と受け身に読む。
- 勿復道 … もう二度と愚痴を言うのはよしましょう。もうこれ以上恨み言を言うのはやめましょう。「道」は、言う。「勿復~」は「二度と~しない」と訳す。
努力加餐飯
努力して餐飯を加えよ
- 努力 … つとめて。
- 加餐飯 … 食事をとってください。食事に気をつけてください。健康に気をつけてください。お体を大切にしてください。当時の挨拶言葉。「餐飯」は食事。
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