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上京即事(薩都剌)

上京即事
じょうけいそく
さっ都剌とら
  • 〔テキスト〕 『薩天錫詩集』七言絶句(『四部叢刊 初編集部』所収)、『雁門集』巻三(『四庫全書』所収)、『元詩選』初集 巻三十五(『四庫全書』所収)、他
  • 七言絶句。甜(平声覃韻)、簾(平声塩韻)通用。
  • 上京 … 遼の首都、上京臨潢りんこう(現在のバイリン左旗)。内モンゴル自治区赤峰市にある。ウィキペディア【バイリン左旗】参照。
  • 即事 … 目の前の情景や事柄に即して、見たままに詠じたもの。
  • 薩都剌 … 生没年不詳。元代の詩人。雁門(山西省代県)の人。蒙古人。あざなは天錫。直斎と号した。泰定四年(1327)、進士に及第。官僚としては不遇に終わった。詩集『雁門集』があり、魯迅に愛読された。ウィキペディア【薩都剌】参照。
牛羊散漫落日下
ぎゅうよう 散漫さんまんたり 落日らくじつもと
  • 牛羊 … 牛と羊の群れ。
  • 散漫 … 一面に散らばっている様子。
  • 落日 … 夕日。
野草生香乳酪甜
そう こうしょうじて にゅうらくあま
  • 生香 … 香ばしい匂いがする。
  • 乳酪 … ここでは牛や羊の乳汁を発酵させたもの。ヨーグルトの類。
  • 甜 … 甘い。『薩天錫詩集』や『雁門集』等では「酣」に作るが、『元詩選』では「甜」に作る。
卷地朔風沙似雪
く 朔風さくふう すな ゆきたり
  • 朔風 … 北風。朔は、北方のこと。曹植の「朔風の詩」(『文選』巻二十九)に「朔風さくふうあおぎ、もっ魏都ぎとおもう」(仰彼朔風、用懐魏都)とある。ウィキソース「朔風詩」参照。また謝朓の「ちょうる」(『文選』巻三十)に「朔風さくふう飛雨ひうき、蕭条しょうじょうとしてこうじょうよりきたる」(朔風吹飛雨、蕭條江上來)とある。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 沙似雪 … 砂が空に舞い上がって雪のようである。「沙」は砂と同じ。
家家行帳下氊簾
家家いえいえこうちょう 氈簾せんれんくだ
  • 家家 … 多くの家。
  • 行帳 … モンゴル人の幕舎。テントの類。
  • 氈簾 … 毛織物の垂れ幕。
  • 下 … 下げている。垂らしている。
歴代詩選
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北宋 南宋
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
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