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岳鄂王墓(趙孟頫)

岳鄂王墓
岳鄂王がくがくおうはか
ちょうもう
  • 〔テキスト〕 『松雪斎文集』巻四(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
  • 七言律詩。離・危・旗・支・悲(平声支韻)。
  • 岳鄂王 … 南宋の武将・忠臣、岳飛のこと。1103~1141。相川湯陰(河南省湯陰県)の人。あざな鵬挙ほうきょおくりなぼく。何度も金を破り、主戦論を唱えたが、和平派の宰相秦檜しんかいの策謀によって投獄されて殺された。『岳武穆集』がある。また、書家としても有名。ウィキペディア【岳飛】参照。
  • 墓 … 浙江省杭州市西湖のほとりに岳王廟がある。ウィキペディア【岳王廟】参照。
  • 趙孟頫 … 1254~1322。元初の政治家、書家、画家、文人。呉興(浙江省)の人。あざなごう。松雪道人・鷗波道人などと号した。おくりなは文敏。もと宋の皇族だったが、元に仕えた。書は王羲之の書風を継承した。著に『松雪斎文集』十巻がある。ウィキペディア【趙孟フ】参照。
鄂王墳上草離離
鄂王がくおうふんじょう くさ離離りりたり
  • 墳上 … 墓の上。「墳」は土を丸く盛りあげて作った墓。
  • 離離 … 草がよく茂っているさま。
秋日荒涼石獸危
しゅうじつ こうりょう せきじゅうあやうし
  • 秋日 … 秋の日差し。
  • 荒涼 … 荒れはてて寂しい様子。
  • 石獣 … 石造りの獣の像。貴人の墓前に並べる風習があった。
  • 危 … 傾いて倒れそうなさま。
南渡君臣輕社稷
なん君臣くんしん しゃしょくかろんじ
  • 南渡 … 金に圧迫されて都を汴京べんけい(河南省開封市)から南の臨安(浙江省杭州市)に移したことを指す。
  • 君臣 … 君主とその臣下。君主とは南宋の初代皇帝、高宗(在位1127~1162)を指す。ウィキペディア【高宗 (宋)】参照。臣下は和平派の宰相秦檜しんかいらを指す。ウィキペディア【秦檜】参照。
  • 社稷 … 国家・王朝をいう。社は、土地の神。稷は、五穀の神。この二神を国の守り神として必ず祭った。双声(二字の語頭子音が同じ)語。
  • 軽 … 大切にしない。いい加減に扱う。
中原父老望旌旗
ちゅうげんろう せいのぞ
  • 中原 … 黄河の中下流域。ここでは金の領土となった北中国の地を指す。
  • 父老 … 村の主だった老人。または老人に対する尊称。
  • 望旌旗 … 天子の御旗の帰ってくるのを待ち望んでいた。「旌旗」は軍旗。金に連れ去られた北宋の最後の皇帝、欽宗(在位1126~1127)を指す。ウィキペディア【欽宗】参照。
英雄已死嗟何及
英雄えいゆうすです なげくもなんおよばん
  • 英雄 … 岳飛を指す。
  • 嗟 … 嘆く。「ああ」と読んでも良い。
  • 何及 … どうにもならない。間に合わない。
天下中分遂不支
てん ちゅうぶんして ついささえず
  • 天下中分 … 北は金、南は宋と、天下が二分されたことを指す。
  • 遂 … 「ついに」と読み、「かくして」「とうとう」と訳す。
  • 不支 … 持ちこたえることが出来なかった。
莫向西湖歌此曲
西せいむかってきょくうたうことかれ
  • 西湖 … 浙江省杭州市の西にある湖。ウィキペディア【西湖 (杭州市)】参照。
  • 向 … ここでは「於」と同じ。
水光山色不勝悲
水光すいこう さんしょく かなしみにえず
  • 水光 … 水面の輝き。
  • 山色 … 山の色。山の景色。
  • 不勝 … こらえきれない。耐えられない。
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