堕一歯戯作(龔自珍)
墮一齒戲作
一歯堕ちて戯れに作る
一歯堕ちて戯れに作る
- 〔テキスト〕 『定盦文集補』(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
- 七言絶句。年・宣・邊(平声先韻)。
- 道光六年(1826)、作者三十五歳の作。
- 堕一歯戯作 … 抜けた歯を戯画化し、老いの予兆を感じている様子を詠んでいる。
- 龔自珍 … 1792~1841。清代の学者。仁和(浙江省杭州市)の人。字は璱人。号は定盦。道光九年(1829)、進士に及第。清の大学者で『説文解字注』を著した段玉裁の外孫。公羊学に傾倒し、清末の革新思想の源流となった。『定盦文集』三巻などがある。ウィキペディア【龔自珍】参照。
與我相依卅五年
我と相依ること卅五年
- 我 … わたし。作者を指す。
- 与 … 「と」と読み、「~と」と訳す。「A与B」の場合は、「AとB与」と読む。「與」は「与」の旧字体。
- 相依 … 寄り添う。
- 相 … ここでは「互いに」という意味ではなく、動作に対象があることを示す言葉。
- 卅五年 … 三十五年。
- 卅 … さんじゅう。音読みは「そう」、訓読みは「さんじゅう」。
論文說法賴卿宣
文を論じ法を説くに卿に頼りて宣ぶ
- 論文説法 … 文学について論じ、哲学を談ずる。ここの「説法」は、仏教用語の「仏教の教えを説ききかせる」という意味ではない。
- 卿 … 親しい間柄の相手を呼ぶ語。君。お前。あなた。
- 頼 … ~のおかげで。
- 宣 … 告げる。表明する。発表する。
感卿報我無常信
卿が我に無常の信を報ぜしに感じ
- 無常信 … 死が一歩近づいたという便り。老いが迫ったという予兆。「無常」は仏教用語で、一切の現象が生滅・変転して定まりがないこと。「信」は便り。知らせ。
- 報 … 知らせてくれたこと。
- 感 … 感謝する。
瘞向垂垂花樹邊
垂垂たる花樹の辺に瘞まん
- 垂垂 … 花が美しく垂れ下がっている様子。
- 花樹辺 … 花開く木のほとりに。釈尊が沙羅双樹の下で涅槃に入られたことを踏まえる。
- 向 … 「於」と同じ。読まない。動作の向かうところを示す前置詞。中世からの俗語。
- 瘞 … 埋める。埋葬する。
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