衛霊公第十五 39 子曰道不同章
418(15-39)
子曰、道不同、不相爲謀。
子曰、道不同、不相爲謀。
子曰く、道同じからざれば、相為に謀らず。
現代語訳
- 先生 ――「方向がちがえば、相談はしない。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 孔子様がおっしゃるよう、「根本主義が違っては相談にならぬ。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 先師がいわれた。――
「志す道がちがっている人とは、お互いに助けあわぬがいい」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 道 … 志す道。進む道。目的。
- 不同 … 同じではない。
- 不相為謀 … お互いに相談し合うことはできない。「謀」は、細かく謀り考える。相談する。話し合う。
補説
- 『注疏』に「此の章は人の事を為すや、必ず須らく先ず謀るべきを言う」(此章言人之爲事、必須先謀)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 『集解』には、この章の注なし。
- 道不同、不相爲謀 … 『義疏』に「人の事を為すは、必ず須らく先ず謀るべし。若し道同じうする者共に謀らば、則ち精審にして誤らず。若し道同じからずして与に共に謀らば、則ち方円の義、鑿枘の事成らざるなり」(人之爲事、必須先謀。若道同者共謀、則精審不誤。若道不同而與共謀、則方圓義、鑿枘事不成也)とある。鑿枘は、ほぞを入れるためにほった穴と、ほぞ。転じて、二つのものが食い違って全く合わないこと。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「若し道の同じき者共に謀らば、則ち精審にして誤らず。若し道の同じからずして相為に謀らば、則ち事は成らざるなり」(若道同者共謀、則精審不誤。若道不同而相爲謀、則事不成也)とある。また『集注』に「同じからずは、善悪邪正の類の如し」(不同、如善惡邪正之類)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「人各〻術業有り。苟くも己の道に非ずして相為に謀るは、則ち惟だ人の職を犯すのみに非ず、必ず其の事を敗る。故に聖人之を戒む」(人各有術業。苟非己道而相爲謀焉、則非惟犯人之職、必敗其事。故聖人戒之)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「道は道術を謂うなり。道同じからずとは、射と御と、及び笙笛と琴瑟との如き、是れなり。吾が素習する所に非ざるは、則ち其の事に精しからず。故に相為に謀らず。其の事を壊らんことを恐るればなり。朱註に、善悪邪正の類の如し、と。是れ必ずしも然らず」(道謂道術也。道不同者、如射與御、及笙笛與琴瑟、是也。非吾所素習、則不精其事。故不相爲謀。恐壞其事也。朱註、如善惡邪正之類。是不必然)とある。道術は、学問技芸のこと。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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