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衛霊公第十五 15 子曰不曰如之何如之何者章

394(15-15)
子曰、不曰如之何、如之何者、吾末如之何也已矣。
いわく、これ如何いかんせん、これ如何いかんせんとわざるものは、われこれ如何いかんともすることきのみ。
現代語訳
  • 先生 ――「『どうしようか、こうしようか。』といわない人は、わしにもどうしようもないだろうよ。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「どうしよう、どうしよう、と言わないやつは、どうしようもないわい。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「どうしたらいいか、どうしたらいいか、とつねにみずからに問わないような人は、私もどうしたらいいかわからない」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 述而第七8」と同じ趣旨。
  • 如之何 … 「どうしようか。どうしたらよかろうか」と常に疑問をいだき、熱心にその問題解決を求めること。「如何」は、「~をいかん(せん)」と読む。目的語がある場合は「如~何」と、目的語を間にはさむ。
  • 末如之何 … どうしてやりようもない。「末」は「無」に同じ。
  • 也已矣 … 「のみ」と読む。強い断定をあらわす助辞。「也已」よりも強い。
補説
  • 『注疏』に「此の章は人の禍難を予防するを戒むるなり」(此章戒人豫防禍難也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 不曰如之何 … 『集解』に引く孔安国の注に「之を如何せんと曰わざるとは、猶お是を奈何せんと曰わざると言うがごときなり」(不曰如之何者、猶言不曰奈是何也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「曰わずは、猶お謂わざるがごときなり。之を如何せんは、事卒に至るも、己の力勢奈何ともす可べき者に非ざるを謂うなり。言うこころは人生は常に当に思慮すべく、卒に如何ともす可からざるの事有り、逆いて之を防ぎ、起こること有らしめず。慮り無くして事たちまち起こるが若し。是れ之を如何せんと曰わざるの事なり。李充云う、之を其の未だ兆さざるを謀りて、之を其の未だ乱れざるを治む。何ぞ当に難に臨むに至りて方に之を如何せんと曰うべけんや、と」(不曰、猶不謂也。如之何、謂事卒至、非己力勢可奈何者也。言人生常當思慮、卒有不可如何之事、逆而防之、不使有起。若無慮而事歘起。是不曰如之何事也。李充云、謀之於其未兆、治之於其未亂。何當至於臨難而方曰如之何也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「如は、奈なり。之を如何せんと曰わずは、猶お是を奈何せんと曰わずと言うがごとし」(如、奈也。不曰如之何、猶言不曰奈是何)とある。また『集注』に「之を如何せん、之を何如せんとは、熟思して審処するの辞なり」(如之何、如之何者、熟思而審處之辭也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 如之何者、吾末如之何也已矣 … 『集解』に引く孔安国の注に「之を如何せんとは、禍難已に成るを言う。吾も亦た之を如何ともする無きなり」(如之何者、言禍難已成。吾亦無如之何也)とある。また『義疏』に「若し先に慮らずして之を如何せんとするの事、唯に凡そ人奈何ともする能わざるのみに非ず。聖人と雖も亦た之を如何ともすること無きなり。故に云う、吾之を如何ともすることきのみ、と」(若不先慮而如之何之事、非唯凡人不能奈何矣。雖聖人亦無如之何也。故云、吾末如之何也已矣)とある。また『注疏』に「末は、無なり。若し是れを奈何せんと曰わば、則ち是れ禍難已に成り、救薬す可からず、吾亦た之を奈何ともすること無し」(末、無也。若曰奈是何者、則是禍難已成、不可救藥、吾亦無奈之何)とある。また『集注』に「是くの如くせずして妄りに行えば、聖人と雖も亦た之を如何ともすること無し」(不如是而妄行、雖聖人亦無如之何矣)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「事をはかるはつまびらかならんことを欲し、心をまもるは危うからんことを欲す。苟くも此くの如くならざるは、則ち其れ妄に非ざるは、則ち必ず不智なり」(慮事欲審、操心欲危。苟不如此、則其非妄、則必不智也)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「之を如何いかん、之を如何は、問う辞なり。是れ孔子の問うことを貴ぶなり。大氏たいてい古書の之の字、意義無し。之を如何、如何は、一なり。朱子曰く、熟思して審らかに処するの辞、と。豈に亦た之の字になずめるか」(如之何、如之何、問辭。是孔子之貴問也。大氏古書之字、無意義。如之何、如何、一也。朱子曰、熟思而審處之辭。豈亦泥之字邪)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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