憲問第十四 23 子路問事君章
355(14-23)
子路問事君。子曰、勿欺也。而犯之。
子路問事君。子曰、勿欺也。而犯之。
子路、君に事えんことを問う。子曰く、欺くこと勿かれ。而して之を犯せ。
現代語訳
- 子路が殿につかえる道をきく。先生 ――「小バカにせずに、面とむかっていうこと。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 子路が君に事える道をおたずねした。孔子様がおっしゃるよう、「君を侮ってはいけない。十分の敬意を尽した上で、場合によってはごきげんを損じようとも面を犯して諫め争え。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 子路が君に仕える道をたずねた。先師はいわれた。――
「いつわりのないのがまず第一だ。そして場合によっては面を犯して直言するがいい」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 子路 … 前542~前480。姓は仲、名は由。字は子路、または季路。魯の卞の人。孔門十哲のひとり。孔子より九歳年下。門人中最年長者。政治的才能があり、また正義感が強く武勇にも優れていた。ウィキペディア【子路】参照。
- 君 … 君主。
- 事 … 仕える。「事うること」と読んでもよい。
- 欺 … 詐り侮る。
- 犯 … 君主の機嫌をそこなっても、構わずに諫めること。顔色を犯す。顔を犯す。
- 之 … 「君」を指す。
補説
- 犯 … 『集注』に「犯は、顔を犯して諫争するを謂う」(犯、謂犯顏諫爭)とある。
- 『集解』に引く孔安国の注に「君に事うるの道は、義として欺くべからず。当に能く顔を犯して諫争すべし」(事君之道、義不可欺。當能犯顏諫爭)とある。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「君に事うるの道は、欺かざるを以て本と為す。然れども之を犯すの義を知らざれば、則ち或いは君の過に順うに至る。故に又た曰えり、之を犯せと」(事君之道、以不欺爲本。然不知犯之之義、則或至於順君之過。故又曰犯之)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「人多く欺を以て詐と為せども、亦た欺侮の意有り。子路は行行たり。未だ此の失を免れざるのみ。孔安国曰く、君に事うるの道は、義として欺くべからず。当に能く顔を犯して諫争すべし、と。此れ之を犯すを以て欺くこと勿きの事と為す。孟子曰く、難きを君に責むる之を恭と謂う、と。蓋し古義なり。後儒多く欺くこと勿きと犯すと相反するの説を為す。非なり」(人多以欺爲詐、亦有欺侮之意。子路行行。未免此失耳。孔安國曰、事君之道、義不可欺。當能犯顏諫爭。此以犯之爲勿欺之事。孟子曰、責難於君謂之恭。葢古義也。後儒多爲勿欺與犯相反之説。非矣)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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