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憲問第十四 21 子曰其言之不怍章

353(14-21)
子曰、其言之不怍、則爲之也難。
いわく、これいてじざれば、すなわこれすやかたし。
現代語訳
  • 先生 ――「えらそうなことをいってると、実行するときにこまる。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「はずかしげもなく大言たいげんそうする者は、始めから必ずしようという気持もなく、自分にできるかできぬかも考えずに放言するのだから、その言ったことを実行することがむつかしいのは当然じゃ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「恥ずかしげもなくえらそうなことをいうようでは、実行はあやしいものである」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 其言之不怍 … 「げんじざれば」と読んでもよい。
  • 怍 … 恥じる。「ざん」に同じ。
  • 為 … 実行する。
  • 也 … 「や」と読み、「~こそ」「まったく」と訳す。上に来る句を強調する助辞。
  • 難 … 実行することが難しい。
補説
  • 『注疏』に「此の章は時人の内に其の実無くして、辞に慙怍ざんさく多きをにくむなり」(此章疾時人内無其實、而辭多慙怍)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 其言之不怍、則為之也難 … 『集解』に引く馬融の注に「怍は、慙なり。内に其の実有れば、則ち之を言いてじず。其の実を積む者は、之を為すこと難きなり」(怍、慙也。内有其實、則言之不慙。積其實者、爲之難也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「怍は、慙なり。人内心虚詐なる者、外言貌必ら慙ず。若し内に其の実有れば、則ち外貌慙ずること無し。時に虚妄多ければ、慙ずること無く怍少なし。故に王弼曰く、情中に動きて外言にあらわる。情正実にして而る後に之を言えば怍じず、と」(怍、慙也。人内心虚詐者、外言貌必慙。若内有其實、則外貌無慙。時多虚妄、無慙怍少。故王弼曰、情動於中而外形於言。情正實而後言之不怍)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「作は、慙なり。人若し内に其の実有らば、則ち其の之を言いて慙じず。然らば則ち内に其の実を積むは、之を為すや甚だ難きなり」(作、慙也。人若内有其實、則其言之不慙。然則内積其實者、爲之也甚難)とある。また『集注』に「大言して慙じざるは、則ち必ず為すの志無くして、自ら其の能否をはからず。其の言をまんと欲するも、豈に難からざらんや」(大言不慙、則無必爲之志、而不自度其能否矣。欲踐其言、豈不難哉)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 則爲之也難 … 『義疏』では「則其爲之難也」に作る。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「夫れ其の言を之れ怍じざるは、其の行いのきず無き者に非ずんば能わず。豈に難からんや」(夫其言之不怍、非其行之無瑕者不能。豈不難乎)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「邢疏に曰く、人若し内に其の実有らば、則ち其の之を言うこと慙じず。然らば則ち内其の実を積む者は、之を為すや甚だ難し、と。是れ仁者は之を為すこと難しの言になずむ。然れども辞に失す。朱註のまされるに如かず」(邢疏曰、人若内有其實、則其言之不慙。然則内積其實者、爲之也甚難。是泥仁者爲之難之言。然失於辭。不如朱註之勝矣)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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