述而第七 4 子之燕居章
151(07-04)
子之燕居、申申如也、夭夭如也。
子之燕居、申申如也、夭夭如也。
子の燕居するや、申申如たり、夭夭如たり。
現代語訳
- 先生は自宅では、のびのびとして、たのしそうだった。(魚返善雄『論語新訳』)
- 孔子様がおひまでうちにくつろいでおられるときには、いかにものんびりしたご様子で、にこやかであられた。(穂積重遠『新訳論語』)
- 先師が家にくつろいでいられる時は、いつものびのびとして、うれしそうな顔をしていられた。(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 燕居 … 家でくつろぐこと。「燕」は「安」の意。「宴居」に同じ。
- 申申如 … のびのびとした様子。「~如」は「~のようである」の意。
- 夭夭如 … 楽しそうな、にこやかな様子。
補説
- 『注疏』に「此の章は孔子の燕居の時の体貌を言うなり」(此章言孔子燕居之時體貌也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 燕居 … 『義疏』に「孔子の居処、礼有ることを明らかにするなり。燕居とは、朝より退きて居るなり」(明孔子居處有禮也。燕居者、退朝而居也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『集注』に「燕居は、間暇無事の時」(燕居、閒暇無事之時)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『経典釈文』に「鄭本宴に作る」(鄭本作宴)とある。ウィキソース「經典釋文 (四庫全書本)/卷24」参照。
- 申申如也。夭夭如也 … 『集解』に引く馬融の注に「申申・夭夭は、和舒の貌なり」(申申夭夭、和舒之貌也)とある。和舒は、和らいでのびやかなこと。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「申申とは、心和するなり。夭夭とは、貌舒かなり。玉藻に云う、燕居の貌温温たり、と。郷党に云う、居るに容らず、と。故に当に燕居の時なるべし。所以に心和にして貌舒かなり。故に孫綽曰く、燕居無事なり、故に云う、心内夷和して、外舒暢なる者なり、と」(申申者、心和也。夭夭者、貌舒也。玉藻云、燕居貌溫溫。郷黨云、居不容。故當燕居時。所以心和而貌舒也。故孫綽曰、燕居無事、故云、心内夷和外舒暢者也)とある。また『注疏』に「申申・夭夭は、和舒の貌なり。如は、此くの如しの義なり。体貌の和舒すること、申申・夭夭に似たるが如きを謂うなり。故に玉藻に、一爵を受けて色洒如たるなりと云う。及び郷党に毎に如也と云うは、皆容色の此くの如きを謂う」(申申夭夭、和舒之貌。如者、如此義也。謂體貌和舒、如似申申夭夭也。故玉藻云、受一爵而色洒如也。及郷黨毎云如也者、皆謂容色如此)とある。また『集注』に引く楊時の注に「申申は、其の容舒かなり。夭夭は、其の色愉べるなり」(申申、其容舒也。夭夭、其色愉也)とある。また『詩経』周南の「桃夭」の詩に「桃の夭夭たる、灼灼たる其の華」(桃之夭夭、灼灼其華)とある。こちらの「夭夭」は「美しくて若々しい様子」の意。ウィキソース「詩經/桃夭」参照。
- 『集注』に引く程頤の注に「此れ弟子善く聖人を形容する処なり。申申の字、説き尽くさざるが為に、故に更に夭夭の字を著く。今の人燕居の時、怠惰放肆ならざれば、必ず太だ厳厲なり。厳厲の時、此の四字を著け得ず。怠惰放肆の時も、亦た此の四字を著け得ず。惟だ聖人のみ便ち自ら中和の気有り」(此弟子善形容聖人處也。爲申申字、説不盡、故更著夭夭字。今人燕居之時、不怠惰放肆、必太嚴厲。嚴厲時、著此四字不得。怠惰放肆時、亦著此四字不得。惟聖人便自有中和之氣)とある。放肆は、勝手気ままにすること。厳厲は、厳しくはげしいこと。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「聖人の学を為さんと欲する者は、当に先ず聖人の気象を観るべし。此れ即ち学問の準則、諸を忽せにす可からず」(欲爲聖人之學者、當先觀聖人氣象。此即學問之準則、不可忽諸)とある。気象は、気性。雰囲気。準則は、基準とすべき規則。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「程子謂えらく、申申・夭夭は中和の気象、と。是れ誠に然り。然れども是れ特に和順中に積みて英華外に発わるる者、盛徳の至りなり。豈に学んで為す可けんや。宋儒の輩多く聖人の道を学ばず、而うして聖人を学ばんと欲す。故に爾云う。聖人豈に学んで能くす可けんや」(程子謂、申申夭夭中和之氣象。是誠然。然是特和順積於中而英華發於外者、盛德之至。豈可學而爲乎。宋儒輩多不學聖人之道、而欲學聖人。故爾云。聖人豈可學而能乎)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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