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夜直(王安石)

夜直
ちょく
おう安石あんせき
  • 〔テキスト〕 『臨川先生文集』巻三十一、『宋詩鈔』巻十九、他
  • 七言絶句。殘・寒・干(平声寒韻)。
  • ウィキソース「夜直」参照。
  • 夜直 … 宮中の宿直。
  • 王安石 … 1021~1086。北宋の政治家。臨川(江西省)の人。あざなかい、号は半山。荊国公を贈られたので荊公とも呼ばれる。慶暦二年(1042)、進士に及第。新法を実行し政治改革を推進したが、のち保守派の反対によって辞職した。唐宋八大家の一人。詩文集『臨川先生文集』百巻がある。ウィキペディア【王安石】参照。
金爐香盡漏聲殘
きん こうきて 漏声ろうせいざん
  • 金炉 … 宮中のにある美しい金属製の香炉。
  • 香尽 … 香が燃え尽きる。
  • 盡 … 『宋詩鈔』では「燼」に作る。
  • 漏声 … 水時計の水のしたたる音。「漏」は漏刻。水時計。
  • 残 … 音がかすかになる。音が残響を引きながら消えていく。
翦翦輕風陣陣寒
翦翦せんせんたる軽風けいふう 陣陣じんじんさむ
  • 翦翦 … 肌寒い風が吹く形容。「剪剪」とも書く。このように同じ漢字を重ねた熟語を「ちょうげん」または「じょう」という。
  • 軽風 … 微風。そよ風。
  • 陣陣 … 一陣の風ごとに。ひとしきりずつ。畳語。
春色惱人眠不得
しゅんしょく ひとなやまして ねむ
  • 春色 … 春の景色。春の気配。謝朓の「徐都曹に和す」(『文選』巻三十)に「宛洛えんらく遨游ごうゆうく、春色はこうしゅうに満つ」(宛洛佳遨游、春色滿皇州)とある。宛洛は、宛邑(南陽)と洛陽との二都。遨游は、気ままに遊び楽しむこと。皇州は、帝都の地。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 悩人 … 人の心を悩ませる。人を物思いにふけさせる。
  • 眠不得 … 眠ろうとしても眠れない。「不得眠」の口語的表現。
月移花影上欄干
つきけいうつして 欄干らんかんのぼらしむ
  • 花影 … 花の影。
  • 月移花影上欄干 … 月がいつしか西の空に移って行き、今まで庭にあった花の影が欄干の上に現れてきた。直訳すると「月が花の影を移らせ、欄干にのぼらせた」になる。
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