述懐(魏徴)
述懷
述懐
述懐
中原還逐鹿
中原 還た鹿を逐い
- 中原 … 黄河中流域の中国文明発祥の地のことであるが、ここでは「天下」の意。
- 還 … 『全唐詩』では「初」に作り、「一作還」とある。
- 逐鹿 … 政権や地位を獲得しようとして争うこと。帝位を鹿にたとえ、群雄がこれを逐ったという、『史記』淮陰侯伝による。「鹿」は音が「禄」に通ずるところから。
投筆事戎軒
筆を投じて戎軒を事とす
- 投筆 … 学問や文章の仕事を捨て、戦争に出ること。後漢の名将班超(32~102)は、若いとき小役人をしていたが、ある日、男子たるものは異郷に赴いて大功を立て、諸侯の位を獲得すべきであり、こんなことはしていられないと言って筆を投げ捨てたという故事に基づく。ウィキペディア【班超】参照。
- 事戎軒 … 「戎軒」は兵器と兵車。転じて軍人生活に従事すること。
縱横計不就
縦横 計は就らざりしも
- 縦横 … 合従連衡。「従」は縦で「南北に合する」意、「衡」は横で「東西につらなる」意。
慷慨志猶存
慷慨 志は猶お存せり
- 慷慨 … いきどおり、なげくこと。
仗策謁天子
策を仗いて天子に謁え
- 策 … 馬のむち。
驅馬出關門
馬を駆って関門を出づ
請纓繋南粤
纓を請うて南粤を繋ぎ
- 請纓 … 投降させること。纓は冠のひも。漢の終軍が長纓を請うて、南越王を服さしめた故事による。
- 南粤 … 南越。今の広東省・広西壮族自治区地方にあった国。前207年、秦の南海郡尉趙佗が漢の高祖によって南越王に封ぜられたが、前111年、漢の武帝に滅ぼされた。
憑軾下東藩
軾に憑って 東藩を下さん
- 憑軾 … 「軾」は車の前部にさしわたしてある横木で、乗る者が手をかけたりする所。「憑」はもたれる。転じて、車に乗ったまま敵を説伏し、武力を用いずに功を立てること。
- 東藩 … 東方の属国。藩侯。
鬱紆陟高岫
鬱紆 高岫に陟り
- 鬱紆 … 山道などが曲がりくねるさま。
- 高岫 … 高い峰。「岫」は山中の岩穴。転じて深い山あいのこと。
出沒望平原
出没 平原を望む
- 出没 … 道の屈折に従って現れたり隠れたりすること。
古木鳴寒鳥
古木 寒鳥鳴き
- 鳥 … 『全唐詩』には「一作雁」とある。
空山啼夜猿
空山 夜猿啼く
- 空山 … 人けのないさびしい山。
既傷千里目
既に千里の目を傷ましめ
- 傷千里目 … 『楚辞』宋玉の「招魂」に「湛湛たる江水、上に楓有り、目は千里を極めて、春心を傷ましむ」(湛湛江水兮上有楓、目極千里兮傷春心)とあるのを踏まえる。ウィキソース「楚辭/招䰟」参照。
還驚九折魂
還た九折の魂を驚かす
- 九折魂 … 九折は、川や坂道などが曲がりくねっていること。『楚辞』九章の「抽思」に「惟れ郢の路の遼遠なる、魂は一夕にして九逝す」(惟郢路之遼遠兮、魂一夕而九逝)とあるのに基づく。ウィキソース「楚辭/九章」参照。
- 折 … 『全唐詩』には「一作逝」とある。
豈不憚艱險
豈に艱険を憚らざらんや
- 艱険 … 山道などが険しく難儀なこと。
深懷國士恩
深く国士の恩を懐う
- 国士恩 … 国士として厚遇してもらった天子の恩寵。
季布無二諾
季布 二諾無く
- 季布無二諾 … 季布は楚の人。はじめ項羽に仕えたが、のち漢の高祖に仕えた。一度承諾すれば必ず実行し、前言を翻すことがなかったという故事に基づく。『史記』季布伝に「楚人の諺に曰く、黄金百斤を得るは、季布の一諾を得るに如かず、と」(楚人諺曰、得黃金百斤、不如得季布一諾)とある。ウィキソース「史記/卷100」参照。
侯嬴重一言
侯嬴 一言を重んず
- 侯嬴重一言 … 侯嬴は魏の人。魏の信陵君に厚遇された。信陵君に秦を倒す策略を授け、「自分は年老いて従軍できないから首をはなむけにする」といって、約束の一言を重んじ、自ら首をはねて死んだ故事に基づく。
人生感意氣
人生 意気に感ず
- 人生感意気 … 梁の荀済「贈陰梁州」詩(『古詩紀』巻一百、『文苑英華』巻二百四十七)に「人生意気に感じ、相知るに富貴無し」(人生感意氣、相知無富貴)とあるのに基づく。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷100」「文苑英華 (四庫全書本)/卷0247」参照。
功名誰復論
功名 誰か復た論ぜん
- 功名 … 手柄を立てて有名になること。「こうめい」とも。
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