憫農(李紳)
憫農
農を憫む
農を憫む
- 五言絶句。午・土・苦(上声麌韻)。
- ウィキソース「古風二首」参照。
- 憫農 … 農民を気の毒に思う。『全唐詩』では「古風二首其二」に作り、「一作憫農」と注する。『万首唐人絶句』では「古風二首其二」に作る。『唐文粋』では「憫農二首其二」に作る。『古文真宝前集』では、題下に「農家は暑に当たりて、耘耨し汗を流して、田泥に浹し。人は其の粟を食らうを知りて、耕稼の苦しみを知るに遑あらんや」(農家當暑、耘耨流汗、浹於田泥。人知食其粟、遑知耕稼之苦哉)と注する。耘耨は、耘ること。耕稼は、田畑を耕して作物を植えつけること。『魁本大字諸儒箋解古文眞寶前集』巻上(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 李紳 … 772~846。中唐の詩人・宰相。無錫(現在の江蘇省無錫市)の人。祖先の出身地は亳州(現在の安徽省亳州市)。字は公垂。元和元年(806)、進士に及第。白居易・元稹らと親しく交流した。詩集『追昔遊集』がある。元稹・李徳裕とともに「三俊」と称された。ウィキペディア【李紳】(中文)参照。
鋤禾日當午
禾を鋤いて 日 午に当たる
- 禾 … 稲。または穀物の総称。ここでは、田んぼの意。
- 鋤 … 鋤く。鋤で田を耕すこと。
- 日 … 太陽。
- 当午 … 正午になる。
汗滴禾下土
汗は滴る 禾下の土
- 滴 … しずくになって落ちる。
- 禾下土 … 稲の根もとの土。
誰知盤中飧
誰か知らん 盤中の飧
- 誰知 … 誰が知ってくれようか、誰も知るまい。反語。
- 盤中飧 … 椀の中のご飯。盤は、食物を盛る平らで丸い大皿。飧は、本来は夕食のことであるが、ここでは、ご飯の意。
- 飧 … 『古文真宝前集』『唐詩紀事』では「飱」(「飧」の異体字)に作る。『全唐詩』では「餐」に作る。『万首唐人絶句』『唐文粋』では「飡」(「餐」の異体字)に作る。
粒粒皆辛苦
粒粒 皆辛苦なるを
- 粒粒 … (米の)一つぶ一つぶ。
- 辛苦 … つらい苦しみ。ここでは、苦労の結果できたもの。
- 故事名言「粒々辛苦」も参照。
テキスト
- 『全唐詩』巻四百八十三(排印本、中華書局、1960年)
- 『魁本大字諸儒箋解古文真宝前集』巻上(礒野三郎右衞門等刊、元禄四年)
- 『万首唐人絶句』五言・巻十四(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
- 『唐文粋』巻十六下(姚鉉撰、明嘉靖本影印、『四部叢刊 初篇集部』所収)
- 『唐詩紀事』巻三十九([宋]計有功輯撰、上海古籍出版社、1987年)
- 松浦友久編『校注 唐詩解釈辞典』(大修館書店、1987年)
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