晩春田園雑興 其三(范成大)
晩春田園雑興 其三
晩春田園雑興 其の三
晩春田園雑興 其の三
- 〔テキスト〕 『石湖居士詩集』巻二十七(『四部叢刊 初編集部』所収)、『宋詩鈔』巻六十三(『四庫全書』所収)、他
- 七言絶句。花・家・茶(平声麻韻)。
- 淳熙十三年(1186)、作者六十二歳の作。
- 晩春田園雑興 其三 … 「四時田園雑興」連作六十首中の一つ。四季の農村の風景を絶句という短い形式で詠んでいる。「四時」は四季。春夏秋冬のこと。「春日」「晩春」「夏日」「秋日」「冬日」の五つの季節に分け、それぞれ十二首ずつから成る。
- 雑興 … ある物事や景色から受けた感興を雑然と述べること。
- 范成大 … 1126~1193。南宋の政治家、詩人。呉郡(江蘇省蘇州)の人。字は致能。号は石湖居士。諡は文穆。南宋四大家(陸游・范成大・楊万里・尤袤)の一人。紹興二十四年(1154)、進士に及第。同年の合格者に楊万里がいる。中書舎人(詔勅の作成などを司る官職)、参知政事(副宰相)などを歴任した。好んで田園の風景を詠んだ。著に『石湖居士詩集』三十四巻、『呉船録』がある。ウィキペディア【范成大】参照。
胡蝶雙雙入菜花
胡蝶 双双 菜花に入る
- 胡蝶 … ちょうちょ。
- 双双 … 二羽ずつ。
- 菜花 … 菜の花畑。
日長無客到田家
日長くして 客の田家に到る無し
- 日長 … 春の日が長いこと。昼の時間が長いこと。
- 田家 … 田舎の家。または農家。
- 無客到 … 訪れる人もない。
雞飛過籬犬吠竇
鶏飛んで籬を過ぎ 犬は竇に吠ゆ
- 籬 … まがき。柴や竹などで粗く編んで作った垣根。
- 竇 … 犬が出入りできるよう、塀の下に掘った穴。狗竇。犬くぐり。
知有行商來買茶
知んぬ 行商の来たりて茶を買う有るを
- 知 … ここでは「しんぬ」と読み、「きっと~に違いない」「きっと~のようだ」と訳す。
- 行商 … 旅の商人。
- 買茶 … 仲買人が農家の作った茶を買い付けること。宋代、茶は政府の専売品で、政府の鑑札を受けた商人だけがその売買を許された。『宋詩鈔』(『四庫全書』所収)では「賣菜」に作る。「賣菜」では野菜を売ることなので、まったく意味が違う。
こちらもオススメ!
歴代詩選 | |
古代 | 前漢 |
後漢 | 魏 |
晋 | 南北朝 |
初唐 | 盛唐 |
中唐 | 晩唐 |
北宋 | 南宋 |
金 | 元 |
明 | 清 |
唐詩選 | |
巻一 五言古詩 | 巻二 七言古詩 |
巻三 五言律詩 | 巻四 五言排律 |
巻五 七言律詩 | 巻六 五言絶句 |
巻七 七言絶句 |
詩人別 | ||
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | は行 | ま行 |
や行 | ら行 |