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季氏第十六 3 孔子曰祿之去公室五世矣章

423(16-03)
孔子曰。祿之去公室。五世矣。政逮於大夫。四世矣。故夫三桓之子孫。微矣。
こういわく、ろく公室こうしつることせいなり。まつりごとたいおよぶことせいなり。ゆえ三桓さんかんそんなり。
現代語訳
  • 孔先生 ――「賞罰の権限がおかみになくなって五代になる。政治の権力が家老に移って四代になる。名門の三家(孟孫・叔孫・季孫)の子孫もふるわないわけだ。」(魚返おがえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子の申すよう、「しゃくろく附与ふよの権がの公室を離れてから五代になります。政治が大夫の手に移ってから四代になります。先に『五世まれなり』と申したような次第で、かの三家の子孫がすいしてきたのも、そうあるべきことであります。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「国庫の収入が魯の公室をはなれてから五代になる。政権が大夫の手に握られてから四代になる。従って三桓の子孫が衰微して来たのも当然である」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 禄 … 爵位俸禄を付与する権限。
  • 公室 … 君主の家。魯の君主を指す。
  • 五世 … 宣公・成公・襄公・昭公・定公の五代。
  • 政逮於大夫 … 政治の実権が大夫の手に移る。「逮」は及ぶ。
  • 四世 … 季文子・季武子・季平子・季桓子の四代。
  • 三桓 … 魯の大夫の家柄である孟孫氏(仲孫氏)・叔孫氏・季孫氏の総称。第15代君主桓公の子が分家して出来た。ウィキペディア【三桓氏】参照。
  • 微 … 衰えてきた。
補説
  • 禄之去公室。五世矣 … 『集解』に引く鄭玄の注に「此を言うの時、魯の定公の初め、魯東門の襄仲、文公の子赤を殺して、宣公を立つるより、是に於いて政大夫に在り。爵禄君より出でず。定公に至りて五世と為る」(言此之時、魯定公之初、魯自東門襄仲、殺文公之子赤而立宣公、於是政在大夫。爵祿不從君出。至定公爲五世矣)とある。
  • 大夫 … 魯の大夫。「大夫」は春秋時代の官吏の身分で、けいと士との中間に位する。
  • 政逮於大夫 … 荻生徂徠は「まつりごと大夫におよぶとは、大夫あい及んでまつりごとほしいままにするを謂うなり」(政逮於大夫。謂大夫相及擅政也)と言う。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 四世 … 『集解』に引く孔安国の注に「文子、武子、悼子、平子」とあり、桓子の代わりに悼子を入れている。
  • 三桓 … 『集解』に引く孔安国の注に「三桓とは、仲孫・叔孫・季孫を謂う。三卿は皆桓公に出ず。故に三桓と曰うなり。仲孫氏は其の氏を改めて孟氏と称す。哀公に至りて皆衰う」(三桓、謂仲孫、叔孫、季孫。三卿皆出桓公。故曰三桓也。仲孫氏改其氏稱孟氏。至哀公皆衰)とある。
  • 『集注』に「魯は文公こうじ、公子遂の子赤を殺し、宣公を立てしより、君其の政を失い、成・襄・昭・定をて、凡そ五公なり。逮は、及ぶなり。季武子始めて国政を専らにしてより、悼・平・桓子をて、凡そ四世なり。而して家臣陽虎の執る所と為る。三桓は三家、皆桓公の後なり。此れ前章の説を以て之を推せば、其の当に然るべきを知るなり。此の章専ら魯の事を論ず。疑うらくは前章とともに皆定公の時の語ならん」(魯自文公薨、公子遂殺子赤、立宣公、而君失其政、歴成襄昭定、凡五公。逮、及也。自季武子始專國政、歴悼平桓子、凡四世。而爲家臣陽虎所執。三桓、三家、皆桓公之後。此以前章之説推之、而知其當然也。此章專論魯事。疑與前章皆定公時語)とある。
  • 『集注』に引く蘇軾の注に「礼楽征伐の諸侯より出ずれば、宜しく諸侯の強かるべくして、魯以て政を失う。政の大夫におよべば、宜しく大夫の強かるべくして、三桓以て微なり。何ぞや。強は安に生じ、安は上下の分の定まるに生ず。今、諸侯大夫皆其の上をしのげば、則ち以て其の下に令すること無し。故に皆久しからずして之を失うなり」(禮樂征伐自諸侯出、宜諸侯之強也、而魯以失政。政逮於大夫、宜大夫之強也、而三桓以微。何也。強生於安、安生於上下之分定。今諸侯大夫皆陵其上、則無以令其下矣。故皆不久而失之也)とある。
  • 伊藤仁斎は「此れ上章と皆門人之を録して、以て夫子、春秋を作る所以の由を見せり。いたずらに当時の事を記せるのみに非ず。言うこころは其の有に非ずして有する者は必ず失い、宜しく大なるべからずして大なる者は必ず微なるは、必然の理なり」(此與上章皆門人録之、以見夫子所以作春秋之由。非徒記當時之事而已。言非其有而有者必失、不宜大而大者必微、必然之理也)と言う。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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