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述而第七 22 子曰天生德於予章

169(07-22)
子曰、天生德於予。桓魋其如予何。
いわく、てんとくわれしょうぜり。桓魋かんたいわれ如何いかんせん。
現代語訳
  • 先生 ――「天から徳をさずかった身だ。桓魋(カンタイ)なんぞに手だしはさせぬ。」(魚返おがえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「天から仁義道徳の道を生みつけられたわしじゃ、桓魋かんたいぜいがわしをどうすることができようぞ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「私は天に徳を授かった身だ。桓魋かんたいなどが私をどうにもできるものではない」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 生 … 与える。授ける。「せり」と読んでもよい。
  • 生徳於予 … 「徳を予に生ぜり」と読む。「予に徳を生ぜり」とは読まない。名詞(予)から名詞(徳)へと返っては読まない。
  • 桓魋 … 宋の大夫、向魋しょうたい。司馬(軍務大臣)の位にあった。宋に来た孔子を殺そうとした。ウィキペディア【桓魋】参照。
  • 其 … 「それ」と読み、「いったい」「そもそも」「なんと」と訳す。反語・感嘆を強調する意を示す。
  • 如~何 … 「~をいかん(せん)」と読み、「~をどうするか」「どうしたらよいか」と訳す。方法・処置を問う疑問の意を示す。ここでは目的語があるので「如~何」と、その目的語を間にはさむ。
補説
  • 天生徳於予。桓魋其如予何 … 『集解』の包咸の注に「桓魋は、宋の司馬黎なり。天徳をわれに生ぜりとは、授くるに聖性を以てするを謂うなり。徳を天地に合わせば、吉にして利ならざるは無し。故に其れ予を如何せんと曰うなり」(桓魋、宋司馬黎也。天生德於予者、謂授以聖性也。合德天地、吉無不利。故曰其如予何也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「予は、我なり。桓魋は、宋の司馬なり。凶愚の心つねに孔子を害せんと欲す。孔子故に明言して之を論ず、其の凶心をして止ましむるなり。言うこころは天聖徳を我に生ぜり。我天とさいわいをともにす。桓魋無道と雖も、いずくんぞ能く天にたがいて我を害せんや。故に云う、予を如何せん、と。夫れ凶人も亦た宜しく屢〻しばしば謝せざるべし。而して時有りて須らく道を以て之をくじくべし。故に江熙曰く、小人悪を為すも、理を以て之をさとせば、則ち愈〻いよいよ凶強す。晏然として之を待すれば、則ち更〻こもごも自ら処す。亦た猶おきょうひと文王の徳を聞きて兵解するがごときなり、と」(予、我也。桓魋、宋司馬也。凶愚心恆欲害孔子。孔子故明言論之、使其凶心止也。言天生聖德於我。我與天同烋。桓魋雖無道、安能違天而害我乎。故云、如予何也。夫凶人亦宜不屢謝。而有時須以道折之。故江熙曰、小人爲惡、以理喩之、則愈凶強。晏然待之、則更自處。亦猶匡人聞文王之德而兵解也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『集注』に「桓魋は、宋の司馬しょうたいなり。桓公よりづ。故に又た桓氏と称す。魋孔子を害せんと欲す。孔子言えらく、天既に我に賦するにかくの如きの徳を以てすれば、則ち桓魋其れ我を奈何せん、と。必ず天にたがいて己を害すること能わざるを言う」(桓魋、宋司馬向魋也。出於桓公。故又稱桓氏。魋欲害孔子。孔子言、天既賦我以如是之德、則桓魋其奈我何。言必不能違天害己)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「論に曰く、或ひと曰えり、桓魋は暴人なり、夫子は旅人なり。魋孔子を殺さんと欲せば、何をはばかりて為さざらん。斯の時に在りては、恐らくは之を天に委ね難からんと。曰く、然らず。天に必然の理有り、人に自取の道有り。……言論の能く尽くす所に非ざるなり」(論曰、或曰、桓魋暴人也、夫子旅人也。魋欲殺孔子、何憚而不爲。在斯時、恐難委之於天。曰、不然。天有必然之理、人有自取之道。……非言論之所能盡也)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「蓋し徳とは有徳の人を謂うなり。天孔子に命じて、英才を教育せしむ、而うして有徳の人は、孔子より生ず。是れ天まさに此れを以て孔子に任ず、而るに桓魋若し能く孔子を害せば、則ち有徳の人復た世に生ぜず、天命ぜんなり。孔子は教学を以て自ら任ず、故に是の言有り。文王既に没すと同じき意なり」(蓋德謂有德之人也。天命孔子、教育英才、而有德之人、由孔子生。是天方以此任孔子、而桓魋若能害孔子、則有德之人不復生於世、天命徒然矣。孔子以教學自任、故有是言。與文王既沒同意)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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