勧酒(于武陵)
勸酒
酒を勧む
酒を勧む
勸君金屈巵
君に勧む 金屈卮
- 勧君 … 君に勧める。君に勧めよう。
- 金屈卮 … 曲がった把手のついた黄金の大杯で、四升入るという。卮は、杯。『説文解字』巻九上に「卮は、圜器なり」(卮、圜器也)とある。圜器は、丸い大杯。ウィキソース「說文解字/09」参照。また『東京夢華録』巻九に「御筵の酒盞は皆な屈卮、菜碗様の如くして、手把子有り」(御筵酒盞皆屈卮、如菜碗樣、而有手把子)とある。酒盞は、酒杯。ウィキソース「東京夢華錄/卷九」参照。また、劉宋の鮑照の楽府「行路難十八首」(『楽府詩集』巻七十)の第一首に「君に奉ず金卮の美酒、玳瑁玉匣の彫琴」(奉君金卮之美酒、玳瑁玉匣之彫琴)とある。玳瑁玉匣は、鼈甲飾りの玉の箱。彫琴は、彫刻のある琴。ウィキソース「樂府詩集/070卷」参照。
滿酌不須辭
満酌 辞するを須いず
- 満酌 … 杯になみなみと酒を注ぐこと。南朝梁の徐君蒨「初春内人を携えて行〻戯る」詩(『玉台新詠』巻八)に「満酌す蘭英の酒、此に対して神を娯しますことを得」(滿酌蘭英酒、對此得娯神)とある。内人は、自分の妻を謙遜して言うことば。蘭英は、蘭の花。ウィキソース「初春攜內人行戲」参照。また、南朝陳の江総の楽府「梅花落三首」(『楽府詩集』巻二十四)の第三首に「金卮に満酌して玉柱を催し、落梅 樹下 宜しく歌舞すべし」(滿酌金卮催玉柱、落梅樹下宜歌舞)とある。催玉柱は、早く演奏するよう急き立てること。玉柱は、琴柱。ウィキソース「樂府詩集/024卷」参照。
- 不須辞 … 辞退してはいけない。辞退などしたもうな。不須は、「~(する)をもちいず」と読み、「~する必要はない」「~してはいけない」と訳す。辞は、断る。辞退する。『史記』項羽本紀に「樊噲曰く、臣は死すら且つ避けず。卮酒は安くんぞ辞するに足らん、と」(樊噲曰、臣死且不避。巵酒安足辭)とある。ウィキソース「史記/卷007」参照。
花發多風雨
花発いて 風雨多し
- 花発 … 花が開く。花が咲く。南朝梁の劉緩「敬んで劉長史が『名士傾城を悦ぶ』を詠ずるに酬ゆ」詩(『玉台新詠』巻八)に「遥かに見れば花発くかと疑い、香を聞けば春に異なるを知る」(遙見疑花發、聞香知異春)とある。長史は、官名。刺史(地方長官)の属官。傾城は、美人。ウィキソース「敬詶劉長史詠名士悅傾城」参照。
- 風雨 … 風や雨。雨風。西晋の左思「嬌女詩」(『玉台新詠』巻二)に「華を貪る風雨の中、倏忽数百適」(貪華風雨中、倏忽數百適)とある。倏忽は、時間の極めて短い様子。たちまち。ウィキソース「嬌女詩」参照。
人生足別離
人生 別離足る
余説
この詩には井伏鱒二の名訳がある。
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
(井伏鱒二『厄除け詩集』)
なお、「ハナニアラシノタトヘ」とは「月に叢雲、花に風(=嵐)」のこと。とかく物事には邪魔が起こりやすいことのたとえ。
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
(井伏鱒二『厄除け詩集』)
なお、「ハナニアラシノタトヘ」とは「月に叢雲、花に風(=嵐)」のこと。とかく物事には邪魔が起こりやすいことのたとえ。
詩型・韻字
- 五言絶句。
- 巵・辭・離(上平声支韻)。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻五百九十五(排印本、中華書局、1960年)
- 『全唐詩』巻六百(排印本、中華書局、1960年)※作者:武瓘として収録
- 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 『唐詩品彙』巻四十四([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『唐詩別裁集』巻十九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
- 『万首唐人絶句』五言・巻十三(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)
- 『才調集』巻八(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
- 松浦友久編『校注 唐詩解釈辞典』(大修館書店、1987年)
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