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商山早行(温庭筠)

商山早行
しょうざん早行そうこう
おん庭筠ていいん
  • 〔テキスト〕 『全唐詩』巻五百八十一、『三体詩』五言律詩・四実、『温庭筠詩集』巻七(『四部叢刊 初編集部』所収)、『温飛卿詩集』巻下・天保四年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩10』所収、404頁)、『瀛奎律髄』巻十四、『文苑英華』巻二百九十四、『唐詩品彙』巻六十九、他
  • 五言律詩。郷・霜・牆・塘(平声陽韻)。
  • ウィキソース「商山早行」「溫庭筠詩集 (四部叢刊本)/卷第七」参照。
  • 商山 … 山の名。陝西省しょうけんの東南にある。漢代の初めに、四人の隠士が乱を避けて隠れ住んだことで有名。四人ともひげや眉が皓白こうはく(真っ白)の老人であったので、「商山のこう」と呼ばれた。
  • 早行 … 早朝に旅立つこと。
  • 温庭筠 … 812~?。晩唐の詩人。太原たいげん(山西省祁県)の人。元の名はあざなけい。何度も進士の試験を受け及第しなかったが、随州随県(湖北省)の尉に任命された。李商隠とともに「温李」と並称されている。『温飛卿詩集』七巻がある。ウィキペディア【温庭イン】参照。
晨起動征鐸
あしたきて 征鐸せいたくうごかす
  • 晨 … 朝早く。早朝。
  • 征鐸 … 旅の車の鈴。馬の首につけた鈴。征は、旅行くこと。鐸は、大きな鈴。
  • 動 … 出発の合図に鈴を鳴らすこと。あるいは鈴を鳴らしつつ車を進めることか。
客行悲故郷
客行かくこう きょうかなしむ
  • 客行 … 故郷を離れ、旅路にあること。旅する身。
  • 故郷 … 都長安を指す。
雞聲茅店月
鶏声けいせい 茅店ぼうてんつき
  • 鶏声 … 鶏の鳴き声。雞は、鶏の異体字。
  • 茅店 … かやき屋根の宿屋。店は、粗末な旅館。木賃宿。
人迹板橋霜
人迹じんせき ばんきょうしも
  • 人迹 … 人の足あと。人が行き来したあと。
  • 迹 … 『四部叢刊本』『文苑英華』では「跡」に作る。同義。
  • 板橋 … 木の板を渡しただけの粗末な橋。通常は石橋。
槲葉落山路
槲葉こくよう さん
  • 槲葉 … かしわの葉。槲は、かしわ。落葉樹であるが、冬の間は枝についたままで、春の新芽が出るときに落ちる。
枳花明驛牆
枳花きか えきしょうあきらかなり
  • 枳花 … からたちの花。春に白い花が咲く。
  • 駅牆 … 駅舎の土塀。
  • 牆 … 『四部叢刊本』『和刻本』では「墻」に作る。異体字。
因思杜陵夢
りておもう りょうゆめ
  • 因思 … そこでふと思い起こされる。それがきっかけとなって思い出される。
  • 杜陵 … 長安城の東南の郊外にある地名。杜陵県。前漢の宣帝(在位前74~前48)が作った陵墓の杜陵に因んだもの。当時有名な行楽地であった。『読史方輿紀要』陝西、杜陵城の条に「府の東南十五里。周の杜伯の国なり。秦の武公十一年(前687)、初めて杜県を置く」(府東南十五里。周杜伯國也。秦武公十一年初置杜縣)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷五十三」参照。また『漢書』宣帝紀に「元康元年(前65)春、杜の東原上を以て初陵をつくり、名を杜県とあらため杜陵とす」(元康元年春、以杜東原上爲初陵、更名杜縣爲杜陵)とある。ウィキソース「漢書/卷008」参照。ウィキペディア【杜陵県 (陝西省)】参照。
鳧雁滿迴塘
がん 迴塘かいとう
  • 鳧雁 … 野鴨と雁。
  • 鳧 … 『四部叢刊本』『和刻本』『瀛奎律髄』『文苑英華』では「鳬」に作る。異体字。
  • 迴塘 … 回るように湾曲した池。塘は、池の堤。または堤に囲まれた池。曲江を指すと思われる。
  • 迴 … 『三体詩』では「回」に作る。『四部叢刊本』では「廻」に作る。いずれも同義。
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