柳枝十首 其二(銭謙益)
柳枝十首 其二
柳枝十首 其の二
柳枝十首 其の二
- 〔テキスト〕 『牧斎初学集』巻十一(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
- 七言絶句。年・憐・眠(平声先韻)。
- 柳枝 … 柳の枝。
- この詩は、崇禎二年(1629)、罷免されて郷里に帰る途中、徳州(山東省徳州市)滞在中の作。柳に託して作者の心境を表現している。
- 銭謙益 … 1582~1664。明末・清初の学者、詩人。常熟(江蘇省常熟市)の人。字は受之。号は牧斎。万暦三十八年(1610)、進士に及第。明・清の両朝に仕えたため、のちに批判された。著に『初学集』百十巻、『有学集』五十巻がある。ウィキペディア【銭謙益】参照。
離別經春又隔年
離別して春を経 又年を隔つ
- 離別 … お前(柳)と別れて。
- 経春 … 春が過ぎ。
- 又 … 「また」と読み、「また~」「またもや~」「さらに~」と訳す。
- 隔年 … 年が変わって次の年になる。「一年おき」の意ではない。
搖靑漾碧有誰憐
青を揺るがし碧を漾わすも 誰有ってか憐れまん
- 揺青 … 緑の葉を揺るがせる。
- 漾碧 … 緑の色を漂わす。「漾」は漂う。漂わす。
- 有誰憐 … 誰がいとおしんでくれるものか。
- 憐 … 『牧斎初学集』(『四部叢刊 初編集部』所収)では「怜」に作る。「憐」の俗字。
春來羞共東風語
春来って 東風と共に語るを羞ず
- 春来 … 春になったが。
- 東風 … 春風。
- 共 … 「~とともに」と読み、「~といっしょに」と訳す。
- 羞語 … 語り合うのも恥ずかしく。
背却桃花獨自眠
桃花に背却して 独り自ら眠る
- 桃花 … 桃の花。官僚として華やかに活躍することの喩え。
- 背却 … (柳も自分も)背を向けたまま。
- 独自眠 … たった一人きりで眠っている。
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