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偶成(朱熹)

偶成
偶成ぐうせい
しゅ
  • 七言絶句。成・輕・聲(平声庚韻)。
  • 偶成 … 偶然に出来上がった詩。たまたま出来た詩。勧学の詩として有名。
  • 朱熹 … 1130~1200。南宋の儒学者。げん(江西省婺源県)の人。あざな元晦げんかい、または仲晦、号は晦庵かいあん晦翁かいおうおくりなは文公。朱子と尊称される。紹興(1148)年、十九歳で進士に及第。北宋のしゅうとん程顥ていこうていらの学説を集大成し、その学説は朱子学と呼ばれた。著書は『四書集註』『近思録』『資治通鑑綱目』『小学』など多数ある。ウィキペディア【朱熹】参照。
少年易老學難成
しょうねんやすく がくがた
  • 少年 … 若者。青年。
  • 易老 … 年をとってしまう。
  • 学 … 学問。
  • 難成 … 完成しない。成就しない。
一寸光陰不可輕
一寸いっすん光陰こういん かろんずからず
  • 一寸光陰 … ごくわずかな時間。「光陰」は時間。
  • 不可軽 … おろそかにしてはならない。
未覺池塘春草夢
いまめず とうしゅんそうゆめ
  • 未覚 … 夢心地からまだ覚めきらぬうちに。
  • 池塘 … 池のほとり。池の堤。池の土手。
  • 春草 … 春の草。若草。惟肖得巌「進学軒」(『翰林五鳳集』巻三十七)では「芳草」に作る。『大日本仏教全書145』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 池塘春草夢 … 池のほとりで若草が萌え出て、夢心地にある様子。将来をあれこれ夢想している若者の気分を喩えている。謝霊運の「池塘生春草」の句に基づく。
階前梧葉已秋聲
階前かいぜんよう すでしゅうせい
  • 階前 … 階段の前。
  • 梧葉 … 青桐あおぎりの葉。青桐は他の植物より落葉が早く、秋の到来をいち早く知らせてくれる。
  • 秋声 … 秋風の吹く音や木の葉の散る音など、秋を感じさせる物音。
余説
 近年の研究では、この詩の作者は朱熹ではなく、五山の禅僧、観中中諦(1342~1406)である可能性が最も高いと考えられている。詩題は「偶成」ではなく「進学斎」、転句が「枕上未醒芳草夢」、『青嶂集』に収録されている。朝倉ひとし氏の論文「『少年老い易く学成り難し』詩の作者は観中中諦か」(『国文学攷』185号、広島大学国語国文学会、2005年3月)で詳しく論じられている。
 また、ウィキペディア【少年老いやすく学なりがたし】も参照。
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