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十五夜望月(王建)

十五夜望月
じゅうつきのぞ
王建おうけん
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百一、『王司馬集』巻八(『四庫全書 集部』所収)、『唐王建詩集』巻九・文化七年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩8』所収、377頁、略称:文化刊本)、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、64頁)、『唐詩品彙』巻五十一、『唐詩別裁集』巻二十、『唐人万首絶句選』巻五、他
  • 七言絶句。鴉・花・家(平声麻韻)。
  • ウィキソース「十五夜望月寄杜郎中」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』では「十五夜、月を望む。杜郎中に寄す」(十五夜望月寄杜郎中)に作る。杜郎中については不明。郎中は、官名。周代は近侍の通称。隋唐代以後、尚書省のりくがそれぞれ四司に分かれ、その各司の長。寄は、詩を人に託して送り届けること。『唐詩品彙』『万首唐人絶句』には題下に「時に琴客を会す」(時會琴客)とある。
  • 十五夜 … 陰暦八月十五日の夜。十五夜の月を「中秋の名月」と言う。
  • 望月 … 月を眺めて楽しむこと。
  • この詩は、八月十五日の夜、月を眺めて詠んだもの。
  • 王建 … ?~830?。中唐の詩人。潁川えいせん(河南省許昌市)の人。あざなちゅうしょ。大暦十年(775)、進士に及第。はじめなんけん(陝西省)となり、せんしゅう(河南省)司馬で終わった。『王司馬集』八巻がある。ウィキペディア【王建 (唐)】参照。
中庭地白樹棲鴉
ちゅうてい しろうして からす
  • 中庭 … おもの正面にある庭。
  • 地白 … 月光で地面が白く輝いている様子。
  • 鴉 … からす。『万首唐人絶句』では「鵶」に作る。異体字。
  • 棲 … ねぐらにつく。ここでは月光の明るさで木に棲む鴉までが見えている様子。蘇軾の「舟中夜起く」に「落月らくげつ柳にかかりて懸蛛けんちゅを看る」(落月挂柳看懸蛛)とある。懸蛛は、ぶら下がった蜘蛛くも。ウィキソース「舟中夜起」参照。『文化刊本』『唐人万首絶句選』では「栖」に作る。同義。
冷露無聲溼桂花
れいこえく けい湿うるお
  • 冷露 … 冷やかな露。
  • 無声 … 音もなく。
  • 桂花 … 木犀もくせいの花。月に桂樹が生えているという伝説があり、その伝説にちなんでいったものと思われる。『酉陽ゆうようざっ』に「旧言に月中に桂有り、蟾蜍せんじょ有りと。故に異書に言わく、月桂高きこと五百丈、下に一人有り、常に之をる。樹のきず随いて合う。人の姓は呉、名は剛、西河の人。仙を学びて過ち有り。たくして樹をらしむ」(舊言月中有桂、有蟾蜍。故異書言月桂高五百丈、下有一人、常斫之。樹創隨合。人姓吳、名剛、西河人。學仙有過。謫令伐樹)とある。蟾蜍は、ひきがえる。月に棲んで月を食い、このために月が欠けるといわれる。ウィキソース「酉陽雜俎/卷一」参照。
  • 湿 … しっとりと濡らす。『四庫全書本』『文化刊本』『古今詩刪』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「濕」に作る。本来は「溼」が旧字で「濕」が俗字。
今夜月明人盡望
こん月明げつめい ひとことごとのぞむも
  • 月明 … 月あかり。明るい月の光。満月の光。ここでは十五夜の名月。中秋の名月。
  • 人尽望 … 誰しも眺めていることであろうが。
不知秋思在誰家
らず しゅうの いえにか
  • 不知 … ~だろうか。~かしら。
  • 秋思 … (明月を誰しも眺めているだろうが、中でも最も)秋の思いにふけっている人(は)。秋の情緒を心に深く味わっている人(は)。
  • 在誰家 … いったい誰であろうか。誰家は、二字で「だれ」と訳す。家は、人称につく助辞で俗語的表現。
  • 在 … 『全唐詩』には「一作落」とある。
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