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寄山中高逸人(孟貫)

寄山中高逸人
さんちゅう高逸こういつひと
孟貫もうかん
  • 五言律詩。常・房・香・涼(平声陽韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷758」参照。
  • 高逸 … 世俗にとらわれず、自由な境地にいる人。ここでは、山中に住む隠者と思われる。
  • 寄 … 詩を人に託して送り届けること。「贈」は、詩を直接手渡すこと。
  • 孟貫 … 生没年不詳。五代の詩人。あざなは一之。建安(今の福建省南平なんへい建甌けんおう市)の人。『孟一之詩集』一巻がある。ウィキペディア【孟貫】(中文)参照。
煙霞多放曠
えん おおくは放曠ほうこう
  • 煙霞 … もやや霞。
  • 放曠 … 物事に拘束されずに気ままなこと。畳韻。『晋書』桓石秀伝に「性放曠、常に林沢によくちょうし、えいしゃくを以て心をつながれず」(性放曠、常弋釣林澤、不以榮爵嬰心)とある。弋釣は、魚鳥をとること。栄爵は、名誉ある高い爵位。ウィキソース「晉書/卷074」参照。
吟嘯是尋常
ぎんしょう じんじょう
  • 吟嘯 … 声を長く引いて詩歌をうたうこと。『幽明録』巻一に「楽安県の故市は荒乱を経て、人民餓死し、枯骸地をうずむ。天くもり将に雨ふらんとするごとに、すなわち吟嘯呻嘆するを聞き、声耳にかまびすし」(樂安縣故市經荒亂、人民餓死、枯骸塡地。毎至天陰將雨、輒聞吟嘯呻嘆聲、聒於耳)とある。ウィキソース「幽明錄」参照。
  • 尋常 … 日常の普通のこと。当たり前。
猿共摘山果
さるともに さん
  • 山果 … 山で採れる果物。
僧鄰住石房
そうとなりて 石房せきぼうじゅう
  • 僧隣 … 寺のほとりに居を構えたことを指す。
  • 石房 … 石づくりの部屋。石室。
躡雲雙屐冷
くもみて 双屐そうげきひややかに
  • 躡雲 … 雲を踏む。雲に乗る。
  • 双屐 … ふたつのぐつ
採藥一身香
くすりって 一身いっしんかんば
  • 薬 … 薬草。
  • 一身 … 身体じゅう。
  • 一 … 『全唐詩』には「一作滿」とある。『孟一之詩集』では「滿」に作る。
我憶相逢夜
われおもう あいよる
  • 憶 … 過去のことを思い出す。
松潭月色涼
しょうたん げっしょくすずしきを
  • 松潭 … 松の茂る谷川のよどんでいる処。
  • 月色 … 月の色。また、月の光。月かげ。
テキスト
  • 『増註三體詩』巻三・五言律詩・前虚後実(『漢文大系 第二巻』冨山房、1910年)
  • 『全唐詩』巻七百五十八(揚州詩局本縮印、上海古籍出版社、1985年)
  • 『孟一之詩集』(『唐詩百名家全集』所収)
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