寄山中高逸人(孟貫)
寄山中高逸人
山中の高逸の人に寄す
山中の高逸の人に寄す
煙霞多放曠
煙霞 多くは放曠
- 煙霞 … 靄や霞。
- 放曠 … 物事に拘束されずに気ままなこと。畳韻。『晋書』桓石秀伝に「性放曠、常に林沢に弋釣し、栄爵を以て心を嬰がれず」(性放曠、常弋釣林澤、不以榮爵嬰心)とある。弋釣は、魚鳥をとること。栄爵は、名誉ある高い爵位。ウィキソース「晉書/卷074」参照。
吟嘯是尋常
吟嘯 是れ尋常
- 吟嘯 … 声を長く引いて詩歌をうたうこと。『幽明録』巻一に「楽安県の故市は荒乱を経て、人民餓死し、枯骸地を塡む。天陰り将に雨ふらんとする毎に、輒ち吟嘯呻嘆するを聞き、声耳に聒し」(樂安縣故市經荒亂、人民餓死、枯骸塡地。毎至天陰將雨、輒聞吟嘯呻嘆聲、聒於耳)とある。ウィキソース「幽明錄」参照。
- 尋常 … 日常の普通のこと。当たり前。
猿共摘山果
猿と共に 山果を摘み
- 山果 … 山で採れる果物。
僧鄰住石房
僧と隣りて 石房に住す
- 僧隣 … 寺のほとりに居を構えたことを指す。
- 石房 … 石づくりの部屋。石室。
躡雲雙屐冷
雲を躡みて 双屐冷やかに
- 躡雲 … 雲を踏む。雲に乗る。
- 双屐 … ふたつの木沓。
採藥一身香
薬を採って 一身香し
- 薬 … 薬草。
- 一身 … 身体じゅう。
- 一 … 『全唐詩』には「一作滿」とある。『孟一之詩集』では「滿」に作る。
我憶相逢夜
我は憶う 相逢う夜
- 憶 … 過去のことを思い出す。
松潭月色涼
松潭 月色涼しきを
- 松潭 … 松の茂る谷川のよどんでいる処。
- 月色 … 月の色。また、月の光。月かげ。
テキスト
- 『増註三體詩』巻三・五言律詩・前虚後実(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)
- 『全唐詩』巻七百五十八(揚州詩局本縮印、上海古籍出版社、1985年)
- 『孟一之詩集』(『唐詩百名家全集』所収)
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