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楚辞 きゅう第二 (四)しょうじん

帝子降兮北渚 目眇眇兮愁予
てい北渚ほくしょくだる。眇眇びょうびょうとしてうれえしむ。
  • ウィキソース「九歌」参照。
  • 湘夫人 … 洞庭湖に注ぐ湘水の女神のこと。堯帝の二人の娘、姉のこうと妹の女英じょえいは、ともに舜帝の妃となったが、舜帝が没した時、その後を追って湘水に身を投げて死に、水神になったという。姉を湘君、妹を湘夫人と呼ぶ。後世、二人を総称して、湘君・湘夫人・湘霊・湘妃・湘娥などという。また、湘君を男神、湘夫人を女神とし、二人を夫婦とする説もある。
  • 帝子 … 天帝の御子。湘君を指す。
  • 北渚 … 北の渚。
  • 眇眇 … はるか遠くを眺めやるさま。
  • 予 … 湘夫人を指す。
嫋嫋兮秋風 洞庭波兮木葉下
嫋嫋じょうじょうたるしゅうふう洞庭どうていなみだって木葉もくようくだる。
  • 嫋嫋 … 風がそよそよと吹く様子。
  • 洞庭 … 洞庭湖。湖南省北部にある巨大な湖。ウィキペディア【洞庭湖】参照。
  • 波 … 動詞として「なみだつ」と読む。
  • 木葉 … 木の葉。
  • 下 … 散る。
登白薠兮騁望 與佳期兮夕張
白薠はくへんのぼりてのぞみをせ、佳期かきともにせんとしてゆうべにる。
  • 登 … 底本には存在しないが補った。
鳥何萃兮蘋中 罾何爲兮木上
とりなんひんなかあつまれる。あみなんうえせる。
  • 鳥何 … 「何」は、底本には存在しないが補った。
  • 罾 … 漁網。
沅有茞兮醴有蘭 思公子兮未敢言
げんり、れいらんり。こうおもいていまえてわず。
荒忽兮遠望 觀流水兮潺湲
荒忽こうこつとしてとおのぞみ、りゅうすい潺湲せんかんたるをる。
麋何食兮庭中 蛟何爲兮水裔
なんていちゅうくらい、こうなにをか水裔すいえいす。
朝馳余馬兮江皐 夕濟兮西澨
あしたうま江皐こうこうせて、ゆうべ西澨せいぜいわたる。
聞佳人兮召予 將騰駕兮偕逝
じんすとき、まさとうしてともかんとす。
築室兮水中 葺之兮荷蓋
しつすいちゅうきずき、これきてもておおう。
蓀壁兮紫壇 播芳椒兮成堂
そんかべむらさきだんほうしょういてどうす。
  • 播 … 底本では「匊」に作るが、正しくは「mojikyo_font_040117」。「播」の古字。
桂棟兮蘭橑 辛夷楣兮葯房
かつらむねらんたるきしんやくぼう
罔薜茘兮爲帷 擗蕙櫋兮既張
薜茘へいれいみてし、けいいてめんとしすでる。
白玉兮爲鎭 疏石蘭兮爲芳
はくぎょくちんし、石蘭せきらんいてほうし、
  • 玉 … 底本では「王」に作るが、改めた。
芷葺兮荷屋 繚之兮杜衡
もておくき、これこうめぐらす。
合百草兮實庭 建芳馨兮廡門
ひゃくそうあわせてていたし、芳馨ほうけいんでもんおおう。
九嶷繽兮並迎 靈之來兮如雲
きゅうひんとしてならむかえ、れいきたることくもごとし。
捐余袂兮江中 遺余褋兮醴浦
へいこうちゅうて、ちょうれいて、
搴汀洲兮杜若 將以遺兮遠者
ていしゅうじゃくり、まさもっとおものおくらんとす。
  • 汀洲 … 水ぎわと中洲。
  • 杜若 … やぶみょうが。
  • 搴 … 抜く。
時不可兮驟得 聊逍遙兮容與
とき驟〻しばしばからず。しばらしょうようしてようせん。
九歌第二
(一)東皇太一 (二)雲中君
(三)湘君 (四)湘夫人
(五)大司命 (六)少司命
(七)東君 (八)河伯
(九)山鬼 (十)国殤
(十一)礼魂  
楚辞目次
九歌第二 卜居第六
漁父第七 惜誓第十一
招隠士第十二