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塞上曲二首 其一(王烈)

塞上曲二首 其一
さいじょうきょく二首 其の一
王烈おうれつ
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百九十五、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、61頁)、『唐詩品彙』巻五十五、他
  • 七言絶句。微・衣・飛(平声微韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷295」「御定全唐詩 (四庫全書本)/卷295」参照。
  • 塞上曲 … 「塞下曲」と同じく新楽府題の一つ。『楽府詩集』巻九十二・新楽府辞に見える楽曲の名。『楽府詩集』巻二十一・漢横吹曲に「出塞」「入塞」の曲があり、ここから唐代に「塞上曲」「塞下曲」ができた。
  • この詩は、辺塞における出征兵士の辛苦を詠んだもの。
  • 王烈 … 生没年不詳。中唐の詩人。大暦年間(766~779)の人であること以外は不明。『全唐詩』に五首の詩が残っている。
紅顏歲歲老金微
紅顔こうがん歳歳さいさい きん
  • 紅顔 … 紅顔の少年。紅顔の若者。紅顔は、あかく、つやつやした美しい顔の意。年若い少年のこと。
  • 歳歳 … 来る年ごと。劉廷芝の「白頭を悲しむ翁に代る」に「年年ねんねん歳歳さいさいはなあいたり、歳歳さいさい年年ねんねんひとおなじからず」(年年歳歳花相似、歳歳年年人不同)とある。ウィキソース「代悲白頭吟」参照。
  • 金微 … 金微山。モンゴル国にある阿爾アルタイ山。後漢の永元三年(91)、こうじんしょう等がここで北匈奴を破った。『後漢書』和帝紀に「大将軍竇憲とうけん、左校尉こうを遣わして、居延きょえんの塞よりでしめ、北単于を金微山に囲みて、大いに之を破り、其の母あっを獲る」(大將軍竇憲、遣左校尉耿夔、出居延塞、圍北單于於金微山、大破之、獲其母閼氏)とある。ウィキソース「後漢書/卷4」参照。
  • 老 … 年老いてゆく。
砂磧年年臥鐵衣
せき年年ねんねん てつ
  • 沙磧 … 小石の重なった砂漠。
  • 沙 … 『全唐詩』『古今詩刪』『唐詩品彙』では「砂」に作る。同義。
  • 年年 … 来る年も来る年も。
  • 臥鉄衣 … よろいを着たまま寝ている。
  • 鉄衣 … よろい。「木蘭詩」(『楽府詩集』巻二十五・横吹曲辞)に「さっ金柝きんたくつたえ、寒光かんこうてつらす」(朔氣傳金柝、寒光照鐵衣)とある。ウィキソース「木蘭詩」参照。
白草城中春不入
白草はくそうじょうちゅう はる らず
  • 白草城 … 今の寧夏回族自治区固原市にあった城塞。白草軍城。『新唐書』地理志、武州の条に「神竜元年、省、蕭関県に置く。白草軍は蔚茹水の西に在り」(神龍元年省、置蕭關縣。白草軍在蔚茹水之西)とある。ウィキソース「新唐書/卷037」参照。
  • 中 … ~の中へは。
  • 春不入 … 春も訪れてくることがない。
黃花戍上雁長飛
こうじゅじょう がん つね
  • 黄花戍 … 伊州にあった要塞の名。伊州は、今の新疆ウイグル自治区クムル市(哈密ハミ市)一帯。ウィキペディア【クムル市】参照。『唐詩集註』「伊州歌二首」の蒋一葵の注に「伊州伊吾郡は隴右道に属す。貞観の初め、伊吾城主、七城を挙げて来降す。因りて其の地を列して伊西州と為し、黄花戍を置く」(伊州伊吾郡屬隴右道。貞觀初、伊吾城主舉七城來降。因列其地爲伊西州置黃花戍)とある。『唐詩集註』巻六(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 雁長飛 … 雁がいつも飛んでいる。
  • 雁 … 『古今詩刪』『唐詩品彙』では「鴈」に作る。同義。
  • 長 … 常に。
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