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宮怨(司馬礼)

宮怨
きゅうえん
司馬しばれい
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻五百九十六、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐詩品彙』巻五十四、他
  • 七言絶句。樓・愁・溝(平声尤韻)。
  • ウィキソース「宮怨 (司馬扎)」参照。
  • 宮怨 … 宮女の怨情の意。
  • この詩は、天子の寵愛を失っても宮中を出ることができず、空しく後宮で過ごさなければならない宮女の悲しみを詠んだもの。
  • 司馬礼 … 生没年不詳。晩唐の詩人。宣宗の大中年間(847~860)に活躍した人ということ以外は何もわからない。「礼」は『全唐詩』では「さつ」に作り、「高棅こうへいひんれいつくる」(高棅品彙作禮)とある。高棅(1350~1423)は『唐詩品彙』の編者。『唐詩品彙』では「禮」に作る。
柳色參差掩畫樓
柳色りゅうしょくしんとしてろうおお
  • 柳色 … 青々とした柳の色。
  • 参差 … 不揃いな様子。ここでは柳の枝の長さが長短入りまじって揃わない様子。『詩経』周南・関雎の詩に「しんたる荇菜こうさいは、ゆうこれもとむ」(參差荇菜、左右流之)とある。ウィキソース「詩經/關雎」参照。
  • 画楼 … 美しく彩色した高楼。ここでは宮女の住む楼を指す。
  • 掩 … 柳の枝が掩い隠している。
曉鶯啼送滿宮愁
ぎょうおうおくる まんきゅううれ
  • 暁鶯 … 夜明けに鳴くうぐいす
  • 啼送 … (春の愁いを)鳴き送ってくる。
  • 満宮 … 宮殿に満ち渡る。後宮いっぱいに。
  • 愁 … 春の愁い。
年年花落無人見
年年ねんねんはなつるもひと
  • 年年 … 年ごとに。
  • 花落 … 花は散るけれども。
  • 無人見 … 見てくれる人もない。梁の簡文帝「湘東王に和す三韻二首 其二 冬暁」(『玉台新詠』巻七)に「かつひとく、なんもちいんはやこうしょうするを」(曾是無人見、何用早紅粧)とある。ウィキソース「冬曉 (蕭綱)」参照。
空逐春泉出御溝
むなしく春泉しゅんせんうて御溝ぎょこう
  • 空 … (花びらは)ただ空しく。
  • 逐春泉 … 春の泉の流れに乗って。春泉は宮中に湧く泉を指す。花びらが泉に落ちて水面に浮かび、そのまま流されていく様子。
  • 御溝 … 宮中を流れるお堀。馬縞『中華古今注』巻上、長安禦溝の条に「ちょうあん御溝ぎょこうは、これ楊溝ようこうう。高楊こうようかみうればなり。……禁溝きんこうう。しゅうなんざんみずき、きゅうだいよりぐ。所謂いわゆる御溝ぎょこうなり」(長安御溝、謂之楊溝。植高楊於其上也。……亦曰禁溝。引終南山水、從宮内過。所謂御溝)とある。ウィキソース「古今注/中華古今註」参照。
  • 出 … (御溝を)出て消えていく。
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