>   漢詩   >   唐詩選   >   巻七 七絶   >   漢苑行(張仲素)

漢苑行(張仲素)

漢苑行
漢苑かんえんこう
ちょうちゅう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百六十七、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『楽府詩集』巻九十五、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、64頁)、『唐詩品彙』巻五十二、『唐詩紀事』巻四十二、他
  • 七言絶句。池・枝・知(平声支韻)。
  • ウィキソース「漢苑行」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『唐詩品彙』では「漢苑行二首 其一」に作る。『楽府詩集』『万首唐人絶句』『唐詩紀事』では「漢苑行三首 其二」に作る。なお『唐詩紀事』では王涯の作となっている。ウィキソース「唐詩紀事 (四庫全書本)/卷42」参照。
  • 漢苑行 … 新楽府題。漢苑は、漢の禁苑(宮中の庭園)。すなわち長安の西にあった上林苑のこと。行は、歌・曲の意。『後漢書』明帝紀、永平十五年に「冬、車騎上林苑にこうりょうす」(冬、車騎校獵上林苑)とある。校猟は、鳥や獣が逃げ出さないようにらち(囲い)を作って狩りをすること。ウィキソース「後漢書/卷2」参照。また桓帝紀、延熹元年に「冬十月、広成に校猟して、遂に上林苑に幸す」(冬十月、校獵廣成、遂幸上林苑)とある。ウィキソース「後漢書/卷7」参照。ウィキペディア【上林苑】参照。
  • この詩は、漢の上林苑になぞらえて、唐の御苑の風物を詠んだもの。
  • 張仲素 … 769?~819。中唐の詩人。河間(河北省献県けんけん)の人。あざなかい。貞元十四年(798)、李翺・呂温とともに進士に及第。武寧軍従事となったが、元和十年(815)、司勲員外郎となり、元和十四年(819)、中書舎人に至った。『唐詩選』に四首収める。ウィキペディア【張仲素】参照。
回雁高飛太液池
回雁かいがんたかぶ 太液たいえき
  • 回雁 … 春になって北へ帰る雁。
  • 回 … 『唐詩選』『万首唐人絶句』では「囘」に作る。異体字。
  • 雁 … 『楽府詩集』『唐詩品彙』では「鴈」に作る。同義。
  • 高飛 … 空高く飛ぶ。『全唐詩』には「一作風高、一作高翻」とある。『楽府詩集』『唐詩紀事』では「高翻」に作る。
  • 太液池 … 宮殿にあった池の名。漢代には長安城外西の建章宮の北、未央宮の西南にあった。唐代には城内の大明宮内にあった。『三輔黄図』巻四、池沼の条に「太液池は、長安故城の西、建章宮の北、未央宮の西南に在り」(太液池、在長安故城西、建章宮北、未央宮西南)とある。ウィキソース「三輔黃圖/卷之四」参照。また『史記』封禅書に「ここいてけんしょうきゅうつくる。……きたにはたい漸台ぜんだいおさむ、たかじゅうじょうづけて太液たいえきう。いけなか蓬萊ほうらいほうじょうえいしゅうりょうり。かいちゅう神山しんざんぎょたぐいかたどる」(於是作建章宮。……其北治大池漸臺、高二十餘丈。命曰太液。池中有蓬萊方丈瀛洲壺梁。象海中神山龜魚之屬)とある。ウィキソース「史記/卷028」参照。
新花低發上林枝
しんひくひらく じょうりんえだ
  • 新花 … 新しく咲いたばかりの花。
  • 低発 … 花が地上低く咲き乱れている。
  • 上林枝 … 上林苑の木々の枝。
年光到處皆堪賞
年光ねんこういたところ みなしょうするにえたり
  • 年光 … 初春の日の光。
  • 光 … 『万首唐人絶句』では「灮」に作る。異体字。
  • 到処 … (春の光が)あらゆる所に満ち満ちて。
  • 皆堪賞 … (漢苑はどこもみな)鑑賞するのに十分である。賞は、愛でる。
春色人閒總未知
春色しゅんしょく 人間じんかん べていまらず
  • 春色 … 春の景色。春の趣き。謝朓の「徐都曹に和す」(『文選』巻三十)に「宛洛えんらく遨游ごうゆうく、春色はこうしゅうに満つ」(宛洛佳遨游、春色滿皇州)とある。宛洛は、宛邑(南陽)と洛陽との二都。遨游は、気ままに遊び楽しむこと。皇州は、帝都の地。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 人間 … 俗世間。世間の人々。
  • 総 … すべて。到底。まったく。総は、下の打ち消しを強める働きを持つ。『楽府詩集』『唐詩品彙』では「摠」に作る。同義。
  • 未知 … 知られていない。知る由もない。
  • 未 … 『全唐詩』では「不」に作り、「一作未」とある。『楽府詩集』では「不」に作る。
歴代詩選
古代 前漢
後漢
南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行